ずっ

べしゃっ


 課題で集めたノートをバラまいてしまった。廊下で勢いよくすっ転んで。
「…あーぁ」
 誰もいなかったのが不幸中の幸いである、と思う様にしてノートを拾い集めた。
今日は具合こそ悪くないものの何処かぼんやりしている。とても良くない。
(…まぁ私普段からぼーっとしてるけども)
自分にツッコミを入れながらノートを拾い集めていたら、少し前方に落ちたノートを拾う手があった。
「あ」
「大丈夫?」
 柔らかい声に顔をあげたら、月読君がいつもの微笑みを湛えたまま私を見ていた。
ノートを持つ手とは反対の手を差し出してくれて、その手に掴まって立ち上がる。お礼を言って月読君を見上げた。

生徒会長、月読六斗

 このどちらかと言えばまとまりのない学園の生徒を纏める生徒会長。
優しくてかっこよくて、女子には結構人気あるらしい。でも、私はどこか月読君の目が怖かった。
夜の青く澄んだ闇を宝石にしたみたいな目。綺麗だけど、見かけるたびに背中に寒い物が走る。
こうして向かい合った今も背中に少し寒気が走っている。何なのだろう。
「どうしたの?何処か痛む?」
「…ううん、大丈夫だよ。ノート拾ってくれてありがとう」
 お礼を言えばどういたしまして、と言って廊下を歩いて行く。良かった、今日はあまり目を見ないで済んだ。
内心ほっとしつつ職員室に小走りで向かって入る。私の後ろ姿を月読君が見ていたなんて、鈍い私は最後まで気がつかなかった。

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