【喜一君と有坂】
「超可愛い奴だったのにさー…ホモは嫌だって」
「そりゃあそうだろうな」
「ひでぇよ…」
何時に無く落ち込んでいる喜一を横目で見る。
何があっても取り合えずから元気を見せるこいつが何時になく凹んでいた。
「あーあ…不毛だな俺」
妙にその声が寂しそうに聞えたせいだ。それだけだ。
「好きなら仕方なかったんじゃないか」
「んー…、っ!」
机にへばり付いてた喜一の上体を無理矢理起こさせて素早く無防備な頬に唇を押しつけた。
視線がかち合う前に顔の前の布を下ろして視線から逃げる。
「…有ちゃ…」
「勘違いするなよ」
決して好意とかそんなのではないただの慰めだ。
「男は星の数ほどいるんだろ。元気出せよ」
「…お、おう…?」
まだ何処か呆けた顔してる喜一を残して、俺は足早に教室を出た。
顔を覆う布の下が熱い何て、信じたくなくて。



【夕哉君とチロ様】
くるくると小さな喉の音に夕哉はは困ったように眉を寄せた。
「…ノートとれない」
チロがすやすやと眠るのは広げたノートの上。
気持ち良さそうに眠るのをただ眺めていたい気もするが、このままではノートを取る事が出来ない。そっと丸まった背中に手をのせる。
「チロ様ぁ…おきてー」
「…にゃぅ」
何処かまだ寝ぼけた様な顔のチロは、寄せられた夕哉の鼻に口先を付けてぺろりと舐める。
「うひゃっ」
「…にゃん」
驚いて鼻を押さえる夕哉を余所にチロはもう一度ノートの上で丸くなってすやすやと寝始めた。
「……まぁいっかぁ…」
へにゃり、と笑いながらチロを撫で夕哉はノートを取る事を諦めてシャープペンシルを机の上に置いた。



【増長ちゃんとゆうちゃん】
「まぁちゃんの何味?」
「チョコミントです」
増長が持つチョコレートミントのアイスを見て、夜臼は興味深げに近づく。
「一口食べますか?」
「うん…ん、こっちもらうー」
「えっ」
夜臼に向け差し出されたスプーンの上のアイスを回避し、夜臼は増長の唇に自分の唇を当てた。ついでに唇を舐める。
ほんの数秒の甘いチョコレートミント味のキスに増長の思考が止まった。
「んー何かスースーするね」
「…夜臼さん…」
「唇についてたのとったよ」
「……あの…いえ…何でもないです」
「?」
これが教室での事ならまず何も言わない増長だが二人がいるのは大きなショッピングモール。夕方と言う事もありにぎわっている。
どこかで「あのお姉ちゃんたちちゅーしてるー」何て言う無邪気な声が聞こえてくるような気がして、増長は頭を抱えた。



【模型さんと猫市殿】
カーテンが半分閉められて薄暗い理科室の中、実験道具の入った棚を背に模型さんは座っていた。
「あなたも物好きだね」
「…次の漫画で眼球抉るシーン描かなきゃいけなくなって…」
「…それはどんなお話だい」
呆れた様に笑う模型さんは何時も付けている白いマスクを外していて、剥き出しの筋肉や眼球が見えている。
私がお願いして見せて貰っているのだけども。
模型さんの向かい側に座ってひたすらスケッチを描く。間隔20センチ程。すぐ触れられる距離。
「あとどの位?」
「ん…も、少し…」
スケッチを頼んでからかれこれ10分以上経っている。模型さんは暇なのか小さく欠伸をした。
「んにゃー…ごめんなさい。そろそろ終わりに…」
「そう?役に立てた?」
「はい!何かお礼しないといけないですね」
立ち上がった模型さんに笑いかけると、彼は少し考えた後私に顔を寄せた。
あ、顔、ちか
「い…んっ」
冷たい唇が私の唇に触れる。
真っ直ぐこっちを見る赤い目しか見えなくなって頭の中真っ白くなって、気が付いたら模型さんが笑いながら離れて行った。
「顔真っ赤だよ」
彼が至極楽しそうで、何も言い返せなかった。





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