開けた箱からほろ苦さと甘さを合わせたカカオの匂いが漂い鼻孔を擽る。
箱の均等に分けられた部屋の中、様々な形種類のチョコレートが並んで、甘いその身を食んでくれる相手を待っている。
目の前の少女は目を輝かせて箱の中を覗いていた。
「すごっ…!わぁっ…」
「この前のお礼。受け取ってくれるかな」
 少女は僕の落とし物を拾い丁寧にも届けてくれたのだ。
どうしても見つからず、半ば諦めかけていたもので飛び上がりそうな程嬉しかった。内心。
箱の蓋を閉めて少女…名前はカルラと言ったっけ。その子へ手渡すとカルラはキラキラした目のまま箱を見つめている。
薄く紅潮した頬がまた可愛い。紫亜が仲良くなった白衣の子の友人で、チョコレートが好物らしい。
ならば最高の物を渡すしかないと思い、実行した。ベルギーから取り寄せたチョコレートのセット。
よく僕も買って食べている。
「でもこれ凄く…」
「安物だよ。美味しく食べてね」
 予鈴が鳴ったのを見計らい挨拶をしてカルラの元から去る。日本には無いものだからきっと彼女はそれが幾らするかはわからないだろう。
値段に恐れず美味しいチョコレートを味わってくれたら嬉しいと思う。

ポケットから取り出した別のチョコレートを一粒口に放り入れ、僕はにんまりと笑いながら階段を上がった。


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