目の前で灰色のふわふわした尻尾が右に左に揺れる。振り子のような尻尾が誘惑して来て勉強にならない。
というよりも、灰色の毛玉の様な体で書き取り途中のノートが隠されてしまっていて続きを書くに書けない。
「せ、先生…」
「どうしました猫市さん」
「チロ様が…」
「みゃ」
「…またですか学園長先生」
 私のノートの上で箱座りをしてくつろぐ灰色の毛の長いにゃんここそ、この学園の学園長だった。
近づいてきたジルヴァ先生の手に撫でられ、満足そうに目を細める。良くよく聞けばゴロゴロとのどを鳴らしている。
揺れる尻尾が地味に顔に当たってなんというか至福。
「生徒が勉強できませんので、降りて頂けますか?」
「…にゃー」
 何処か不満そうに鳴き、学園長は私の机を下りてとことこと出入り口へ向かう。
教室の出入り口各所には学園長の為の猫ドアがついているのだ。そこから外へ出て、学園長は何処かへ歩いて行ってしまった。
「次はどこへ行くのやら…」
「また誰かのノートが犠牲になるんですね」
 何処かの誰かの机の上、可愛らしい毛玉がまた勉強妨害していると想像すると表情が緩んだ。すでに他人事である。
暫くして隣のクラスから真苗ちゃんの「かわいいいいぃぃぃ」と狂喜する声が聞こえた気がしたけど関係無い事だと思っておく。

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