面倒だ、と有坂は佛と書かれた布の下で小さく欠伸を噛み殺した。帰り路歩いていた時他校生に絡まれてしまったのだ。
元々妙な成りをしてるのは自分でも分かっているが今日のはそれが理由ではないようだと連れてこられた路地裏で考える。
金髪にピアス。威嚇する様な構え。どこからどう見ても立派な不良。
「てめぇか。俺の女盗ったの」
「…はぁ?」
「とぼけんじゃねぇよ俺の女に声かけてナンパしたんだろうが」
 有坂は女癖が悪い。誘い一緒に遊びに行くのが生きがいの様なものだった。
ただその相手がどんな相手かなんて考えた事も無く、面白ければ一緒に遊びに行くだけのもの。
記憶を手繰り寄せるもあまりにも相手をした少女の数が多くどれなのかがわからない。
「悪い。何回目の子かわかんねぇや」
「―――!!てめぇふざけるのもいい加減にしろよ!!?」
 激昂し掴みかかってきた不良に肩を竦めてため息をつく。相手するのも面倒だった。
「まぁそれは謝る。それより俺早く帰って宿題したいんだが」
 適当に謝った言葉にとうとう不良が切れて有坂の顔を布の上から殴り飛ばした。
壁際に立たされていたため有坂は後ろのコンクリートの壁に背をぶつけ座りこむ。
「もういい、お前殺してやる」
 血走った目で折りたたみ式のナイフを取り出した相手を確認して流石に有坂も表情を顰めた。
今時の不良は怖いものだ。一発程度なら受けても死なないだろう。
何処か遠く考えていた時、路地の入口で鈍い悲鳴が上がる。それは不良の連れていた取り巻きの声だった。
「何…だ?」
「よそ見してんなよ」
「な、んぶっ」
 驚いて後ろを振り返った不良の腹部に起き上がった反動をつけて拳を叩きこむ。
後ろに倒れかかった所に追い打ちをかけもう一発叩きこむと倒れた不良は動かなくなった。
殴りジンジンと鈍く痛む手を振りながら有坂は路地の入口に目をやる。
沈みかけた夕日が差し込む路地の入口に紅い髪の人物が立っていた。何処かで見た事のある顔に有坂は首を傾げる。
「助かった。…で、あんた何処かで会わなかったか」
「お前、隣のクラスだろう」
 静かに告げる声に記憶を辿れば確かに同じ学校内で見た事がある。
廊下ですれ違った程度のものだが。そのまま去ろうとする後ろ姿にもう一度声をかける。
「あんた名前は」
「……黒部」
「黒部ね、今度購買で何か奢るわ」
「そうか」
 何事も無かったように歩き去った黒部の後ろ姿を見送り、有坂もその場を後にした。
伸した他校生たちをほったらかしにしたまま。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -