不思議な話と言うのは昔から多くある。特に学校はどこの学校でも七不思議やら怪談やら聞くと思う。
うちの学校にもあるらしい、と聞いたのは1年生の時だった。隣のクラスの子が行方不明になったとか、結構物騒な話だった様な思い出がある。
「…まさかね」
「猫市ちゃーんかえろー」
「あーい…あ、ごめん。私お手洗い寄ってから行くから先行ってて」
 まどかちゃんの声に返事をしたものの思い直し別れてトイレへ向かう。2階の奥の階段前のトイレ。
放課後、しかも大分日が傾いてしまって電気が無いと見えない位の暗さ。当たり前の様な静寂が少しだけ怖い。
用を足して手を洗って、ハンカチを取り出しながらトイレから出ようと進んだ私の体は戸の前に立っていた人物にぶつかる。
「ぎゃっすみま…せ…ん…?」
 見上げた私の視界が赤に染まる。赤。真っ赤。深紅。
噴き出したばかりの血をぶちまけた様な鮮やかな赤いマントと時代がずれてしまったかのような服装。
驚いて固まる私を見降ろし、真っ赤なその人はにやりと笑い口を開く。なんで、こんな人が女子トイレに―――

ん?女子トイレ…

「赤いマントと青いマント、ど「ぎゃあああああ変質者!!!?」

 ここは女子トイレ。男子トイレと違って入ったから見られるとかそんなのではないが男が入ってくるとすれば目的は覗きとなる。
パニックに陥った私の頭が優先したのは恐怖で叫ぶよりも変態と叫ぶ事だった。お陰で赤い人は面食らったように固まる。
そして私も叫ぶだけ叫び後を考えていなかったため、トイレの奥の壁まで逃げてそこでへたりこんだ。
「いや、私は変質者じゃ…」
「じゃあっなんでっ女子トイレにっ…ひぎゃあぁっ」
「ああもう叫ばないで下さい!!人が来てしまうじゃないですか!」
 声を張り上げて叫んだおかげか、遠くからぱたぱたと走る音が聞こえて来た。それも複数。
足音を聞き赤い人は残念そうに肩を落として消えた。綺麗に。まるでそこに居なかったように。あれ、もしかして…
「人じゃ…ない…?」
「おい何だ!!?」
「猫市ちゃん大丈夫!?」
「ひぃっ!?う…うん…大丈夫…」
 猫先生とまどかちゃんが女子トイレのドアを破る勢いで入って来た。その勢いに驚いて固まったとかは言えない。
まどかちゃんトレードマークの帽子が吹っ飛んで廊下に落ちてますよ。
猫先生、お面があらぬ方向向いてるしブラシが怖いです。

後日私は赤マントという学校の七不思議のひとつの話を聞く事になるが、それはまだ先の話だった。

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