何事も無く終わるはずだった今日が崩れていく。喜一は息苦しさに細く息を吸う。床から伝わる冷気が火照った体には痛い程だった。
何がどうしてこうなったのか。喜一は冗談のつもりで猫を誘った。自分がタチで一発やらないかと。
それまで笑っていた猫の表情が無くなるのを見落として今に至る。
「せんっ…せっ…やめっ…ひっ!?」
 喜一を床に縫い付けている猫の腕をどかそうと掴むがどう力を込めている物かびくともしない。
その上逆の手がジャージの下に潜りこんできたため悲鳴を上げる羽目になった。
侵入した手は目を白黒させる喜一を余所に素肌の上を滑る。
「んぐっ…や、先生っ…なんでっ…」
「……あのな。大人の男に手を出すってこういう事なんだぞ」
「っ…!?や、先生!?」
 猫の声はただ淡々としている。喜一の体に溢れてしまいそうな程の快楽をもたらしているにも拘らず。
刺激に首をもたげ始めた喜一自身を下着の上から擦り上げる。上ずった悲鳴を聞いても、猫は行為をやめなかった。
「せんせ…やっ…んぅっ…やだ…やめて…ひんっ」
「何度も俺は忠告したな。でもお前はふざけて聞こうともしなかった」
 着ていたジャージのズボンが下着ごと取り払われる。完全に勃起した場所を晒されて喜一の頬に朱が走る。
猫が薄く笑った。
「良い眺めだぞ、喜一」
「っう…うぅ…」
 満足に抵抗も出来ず呻く事しか出来ない喜一を見下ろしたまま、猫は力の抜けている喜一の足を掴み持ち上げる。
濁った思考の中、次に自分に襲いかかる出来事に予想が付き喜一は暴れる。
猫を蹴ろうと足に力が込められたが蹴りは虚しく空を掻いただけで猫には当たらなかった。
喜一の抵抗を嗤う様に猫の指が後孔の周りに這わせ、喜一自身のカウパーを潤滑油にして一気に指を押しこんだ。
「ぃあ゛っ…!!?ひっ――いたっ…ああぁっ!!」
 自分は男色だと吹聴している喜一だが、下に回る事はこれが初めてだった。故に貫かれる痛みもその先の快楽も知らない。
指を二本に増やし中を広げる様に動く指の動きに喘ぐ。痛みに慣れて来た頃、猫はようやく中から指を引き抜いた。
「んぁ…せんせ…あっ…」
「入れるぞ」
「え、いや、それはっ…あぅっ」
 猫の勃ち上がったモノを確認しサッと喜一は青くなるが例の如く猫は止めない。
濡れそぼった後孔にあてがいゆっくりと喜一の中へ沈めていった。指なんか比ではない圧迫感に喜一の体がのけぞり悲鳴を上げる。
「ん…狭いな」
「ぃた…せんせっ…抜いてっ…ふあぁっ!?」
「もう少し我慢しろよ」
 ゆっくりと律動が始まり、喜一は声を上げる。痛みしか見いだせず喜一は苦悶の表情を浮かべて声を絞り出した。
猫は泣き出した喜一を見下ろしてやっといつもの柔らかい雰囲気に戻る。困ったように眉を寄せ笑う。
繋がったまま喜一を抱きしめ己の背中に腕を回させた。強くしがみ付いてくる喜一を抱き返し再度奥へ熱を穿つ。
「っうぁっ…せんっ…あっ、んっ」
「…なんだ。気持ち良くなってきたか」
「ちがっ…んあっ!」
 変化は唐突に訪れた。痛みで歪んでいた表情が緩み、熱の篭った目が猫を見上げる。
悲鳴が嬌声に変わっていく様を見て猫は安心したように息を付き、熱の抽出のスピードを上げた。猫自身も限界が近い。
「やぁっ…せんせっ…せんっ…」
「イって良いぞ」
「っあぁ…!」
 鼻に抜ける甘い声を上げ、喜一はやっと果てる事が出来た。溢れた白い雫が覆いかぶさる猫のジャージを汚す。
少し遅れて中から抜いた猫も果てる。暫し二人に静寂が落ち荒い呼吸の音が部屋を満たす。
「…せんせぇ」
「……大人をからかうとこうなるぞ」
「…すみませんでした」
 今だ涙が睫を濡らす喜一の顔を見て猫は愛おしそうに笑い、優しく喜一の頭を撫でた。
その日を境に喜一が見境無く教師へセクハラをする事は無くなったらしい。ただし、教師へは。

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