足元が見えない。私は大きな段ボールを持って歩いていた。中身はなんなのだろう。少し重たい。
フラフラしつつもなんとか職員室まで持てばいいと踏ん張る。
「っと…んしょ…」
何度か落としそうになりながらも少しずつ進んでいた。
いけるいける。私凄い。なんて思っていたら持っていた段ボールがぐらついて前に倒れかける。
あっと声を上げそうになった時には私の影から影ちゃんが飛び出て、触手で空へ落ちた段ボールを受け止めてくれた。
「影ちゃんありがとっ…たすかったぁ」
「あぶない きをつけて」
口から影ちゃんの言葉が漏れる。そこでやっと周りを把握してない事に気がついて辺りを見回す。見た限り誰もいなかった。
良かった、放課後で。人通りが少なくて。
ほっと胸を撫で下ろしながら影ちゃんから段ボールを受け取る。
「早く先生に届けてかえろ。助けてもらったから何か買ってあげる」
私の影の中に戻り小さく揺らいだ影ちゃんにこそっと話かけ、私はまたフラフラと歩き出した。
頼りない私の背中をじっと見ていた相手がいたとも知らずに。




「……」
 猫市がよろよろと歩き去った後、静まる廊下にひたりと足音が響いた。緑青色に近いロングコートを纏い歩く少女。
コートのあちこちに忍ばせた工具が歩くたびに揺れて微かに音を立てる。
「…あの人もスタンド使いなんだ」
 独り言のように呟かれた言葉に呼応し少女の傍らにゆるりと吹き出しの様な物が浮かぶ。
【仲良くなれるかな】
「……なれるだろうか」
 自問自答しながら少女は来た道を戻る。声をかけるのならきっかけが必要だ。
きっかけを持って今度は声をかけよう。少女…増長は人知れず楽しげに笑った。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -