「あったー!やっぱり忘れてたんだ…」
 放課後の教室。帰る途中鞄に今日の宿題のノートを入れ忘れ取りに戻ったら辺りはもう真っ暗だった。
もうすぐ昇降口もしまっちゃうのだろう。その前に帰らなければ。
(鹿尾菜ちゃん達先帰って貰ってよかった…)
 待ってもらってたら凄く待ちぼうけさせる所だったと廊下を歩きながら思う。誰もいない教室、廊下。
職員室にはまだ先生が残っているだろうけれど生徒はほぼ帰ってしまったようで静か。
誰もいないのを良い事に、影ちゃんが私の影からずるりと這い出て背後に並ぶ。甘えるように黒い触手が右手に絡まってきた。
「早く帰って宿題やらなきゃ…ん?」
 昇降口近くまで来た時、下駄箱の合間に人が見えた気がして立ち止まる。影ちゃんはすぐ私の影の中に身を潜めた。
そっと人影の見えた方へ進めば携帯で何かを話す人が。多分、先輩だろう。確証は無いけれど。
「っああぁあそうやってまた無茶を言う!!」
 電話をかけ終えたらしい先輩(?)はとてもイライラしているようで言いながら携帯を壁にぶち当てた。
物凄い音してますけど、あの、大丈夫なんだろうか。
携帯の心配をしていたらその人はこっちを向く。目が合ってしまった。
「あっ…」
「……見た?」
「……見ました」
 明らかに「やばい見られた」って字を顔に貼り付けた様な表情。見てはいけなかったみたいだ。
どうしよう。背中に冷汗が流れる。
「しっ失礼しましたさようなら!!」
「あっえっちょっと!」
 逃げるが勝ち敵前逃亡朝飯前。2年生の下駄箱まで走り光の速さで靴を履き替え昇降口を後にした。
息が上がり走れなくなるまで数分間走り続け、学校から暫くした所で立ち止まり息を整える。
体力ないのに無茶した所為か少し酸欠ふらっふら。
「……何話してたんだろうね?」
 影から出て私を見ていた影ちゃんを見上げれば、彼は無表情のまま首を小さく傾げた。
その後何事も無く無事に家路につき、宿題をすませる事が出来た。
この時の私はまだ知らない。次の日再び携帯ぶん投げてた先輩(?)に偶然校内で出会ってしまう事を。

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