ひかりに触れるという選択

昔から強くてきれいでかっこよくて、ずっとずっと憧れていた。誰も彼もが3代目の孫だからと口にする中、彼女と七代目だけは違った。七代目はオレをライバルと言い、なまえさんはオレを認めてくれた。頑張ってるだろって、本気なんだよって、はやし立てる奴らに一喝したその背中を見て心臓が跳ねた。初恋だった。

後になまえさんは同級生が普通の忍になっていく中、表立って活動しなくなった。所謂、暗部所属になったわけだ。会えるどころかみかける時間も減り、オレもオレで忙しくする日々。一度だけなまえさんに声をかけたとき、昔より大人びた顔で微笑まれて死にそうになった。「なまえねーちゃん、頑張れよ!コレ!」その言葉に目を丸くしてから笑顔で頷いたなまえさんに、いずれ告白するんだと意気込んでいたのが懐かしい。

全ては、戦争後から始まった。
なまえさんが、あのカカシさんと付き合ってると言われたのは誰からだったか。その時の衝撃といったら、どうしようもなかった。初恋は叶わないと誰かが言ったらしいが、叶うと思ってた。なまえさんを側で守るのはオレの使命だと思ったし、絶対に大事にすると誓っていたはずなのに。よりにもよって、1度は火影になった人と。しかもひとまわり近い年の差あるじゃねえか、コレ。
聞いた話だと、暗部で活躍しながらも悩んでいたなまえさんを支えたのが、元暗部でもあり火影様でもあったカカシさんだったらしい。そんなん、卑怯だろ。
広い屋敷の真ん中で、歪む視界に俯いたら涙がこぼれた。

それからはあっという間だった。

七代目の結婚を皮切りに、あの世代がどんどん結婚し次の世代に繋がっていく道中。なまえさんも例外ではなかった。

カカシさんとの結婚。それを聞いたのは良いのか悪いのか、本人の口からで。震えそうになる声を懸命に堪えて、笑顔を取り繕いながら「おめでとうございます」なんて言う。いつの間にかタメ口だった言葉遣いも、年を重ねるごとに敬語に他人行儀になっていく。結婚するのがカカシさんじゃなくてオレとだったら、そんな風にはならなかったのかもしれない。そう考えると、切なくて押し潰されそうだった。やろうと思えばいつでも仕掛けられたのに、彼女を奪おうとしなかったオレへの当て付けかのごとく……なまえさんは数ヵ月後には今まで見たことのないくらい綺麗な格好で、カカシさんの腕を取りながら微笑んでいた。遠くでそれを見つめながら、奥歯を噛み締めた。

結婚も近けりゃ子供の年も近い。火影業務でなにかと忙しいカカシさんが側にいない中、身重のなまえさんがベンチに座ってるのを見かけた。結婚式から意図的に避けていた節はあったから、妊娠してるのは知っていてもこんな状態でひとりでいるなんて思ってもみず。心配になって駆け寄れば、「あら、久し振り。見ないうちに格好よくなってるじゃない。これは次の火影候補も安泰ね」なんて。軽口の冗談でも胸がぽっと熱くなって、視線を外しながらその横に腰を下ろした。
平和な昼下がり、許可をもらってその大きなお腹を撫でたときになんとも言えない気持ちに襲われた。オレがなまえさんの旦那だったら、忙しくてもひとりにさせないしこんな風に無防備にさせないのに。手のひらに伝わる温もりに、そっと頬を寄せる。くすぐったそうに笑ったなまえさんがオレの髪の毛をすくい、くしゃりと撫でた。握りしめたかった指が髪の毛をゆるゆると撫でて、多分こういうのが幸せなんだろう。ずっとこうしてたい、なまえさんに撫でられて一緒に並んで。すんっ、鼻を鳴らしたオレに、なまえさんの不思議そうな声がかけられた。木ノ葉丸くん、泣いてるの?


「泣いてない、泣いてないぞ。コレェ」


笑ったなまえさんにぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜられて、肩を震わせるオレを泣くなとばかりにお腹の中から蹴飛ばされた。くそう、大物になるぞ、お前。

***

「木ノ葉丸先生、諦めろってばさ」

「六代目の奥さんなんでしょ?」

「きっと木ノ葉丸先生は人妻が好きなんだよ」

「そうだけどそうじゃない!誤解するような言い方はやめろ!!コレ!」


ナルトの兄ちゃん、サスケの兄ちゃん。かつてそう呼んでいた人たちの子供たちを預かるようになった。まだまだ未熟だけど、失恋のショックを引きずってことあるごとに泣いていた日々はもうとっくに通り過ぎていて。通り過ぎた結果、いつからか振り切ったオレは今まで出来なかったことを取り返すかのようになまえさんに声をかけまくった。例えカカシさんの奥さんだろうと、髪は銀色で目はなまえさんそっくりな優秀すぎる息子が別の先生のもと下忍をしていようと、もう関係ない。オレは大好きななまえさんと少しでも時間を共有したい。あわよくば……


「絶対やらしい想像してる……」

「木ノ葉丸先生、だらしない顔してますよ」

「つーか、初恋の相手が忘れらんねーとダッセェ」

「う、うるさいっ!オレは本気でなまえさんを好きで、本気で結婚したかったんだ!」

「相手が元火影様だもん、勝ち目ないって」

「あー、アイツのかーちゃんか。何度かうちに来てるけど美人だよな」

「昔からずっと美人だよ。はぁ…もっと早く気持ち伝えてれば……なまえさん好きになったの絶対オレが一番だし……」


教え子の同期の母親を好きだなんて倫理的にアウトなんだろうけど、そうは言ってもこの気持ちは何十年ものだし子育ての落ち着いた今だからこそ積極的になるってものだ。今まで一度もオッケー出されたことはないけどめげないししょげない!諦めない!絶対に奥さんにしたい!!

任務を終えて、火影様の執務室を目指して教え子たちと廊下を歩く。そういえば、なまえさんも最近はカカシさんと任務に出てるとか聞いたような。会えたらいいななんて、ニヤニヤを隠すことなく歩く。サラダに「気持ち悪すぎ」と一刀両断された。


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カカシ先生の奧さんで、そこに娘か息子もいるのに奧さんにずーっと横恋慕してる木ノ葉丸を想像しながら映画見た。途中で投げましたすみません
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