ブラックベリーをひとつまみ

「ビッチ先生も烏間先生狙ってるって言うから焦って告白したのに烏間先生が相手してくれない〜だから殺す〜!」

「物騒なことを言うな。殺すならあの黄色い生物を殺せ」

「殺せんせーは殺せないもん」

「地球が消し飛んでもいいのか?」

「烏間先生の隣で消し飛べるならいつでも」


でへへ
そう私が笑えば、烏間先生は眉ひとつ動かさずに盛大なため息をついた。それから、腕にべったりとくっつく私を鬱陶しそうに振り払う。鬱陶しそうというか、実際鬱陶しかったに違いない。私をひっぺがした後、烏間先生はその腕をパンパンとはたいた。ひどい、私は埃以下の存在なの?
今度は泣き真似をしてみる。さすがの烏間先生も女の子の涙に耐性がないのかびくりと肩を揺らすも、徐々に察してきたのか私の頭を小突くと「いい加減にしろ」と低く呟いた。ちぇっ、なーんにも効きやしないんだもんなーこの人は。


「私、烏間先生のこと本気だから」

「下らないことを言うな。中学生が大人をからかって何が楽しい」

「からかう?それこそなにいってんの先生」


自分より何十センチも高いその顔を見上げる。黒髪がふわりと揺れて、それからその鋭い目が私を見下ろす。冷たいようで優しいそんな目が、私は大好きで。見下ろす烏間先生をじっと見つめてから、その腕にもう一度絡み付く。烏間先生の眉間にシワを寄せた顔。


「烏間先生になら、私の初めて全部あげられるよ」

「!」

「わ、やった!初めて烏間先生動揺させた!」


絡めた腕を意識して胸に押し付けて。中学生の全力の色気をもってして本気を見せつける。目を見開いた烏間先生の喉が上下するのを見て、心のそこから嬉しくなって笑った。ポーカーフェイスの烏間先生が、私にドキッとしたことは間違いなさそう。

烏間先生は、からめられた腕をもう一度振り払うと、大きく咳払いをしてから腕を組み、私の前で仁王立ちをしてみせた。その圧迫感に、思わずこぼれる苦笑い。烏間先生は大きなため息をもう一度つくと、組んでいた腕をほどき、そっと私の頭を撫でた。その大きな手のぬくもりがじんわりと心地いい。


「人を好きになることはいいことだ。でもそういうのは俺じゃなくて同世代としろ」

「なんで。私は烏間先生が大好きなのに」

「俺は大人でみょうじさんは子供だ。それくらい分かるだろう」

「・・・大人って、なに」


ふてくされた私を見て、烏間先生はため息混じりに笑う。撫でられた頭が、今度はぽんぽんと上下した。


「酒が飲めるようになったらまた挑戦しろ。受けてたってやる」

「ほ、んと?!じゃあ、じゃあ、それまで純潔守るね烏間先生!」

「別に守る必要は・・・」

「殺せんせーに大人とのハジメテについて手ほどき受けるね!」

「ちょっと待て」


聞き捨てならないとでも言うかのように、烏間先生は撫でていた手を止める。冷や汗を流しながらどうしたもんかと額に手を当てる姿を見上げながら、もう一度私は笑った。烏間先生がやれやれと苦笑いを溢す。


「心配かけるのだけはやめてくれ」

「はぁーい」


再び絡めた腕はもう振り払われることはなかった。観念したとでも言うような声。私の一方的な思いが少しだけ響いたらいいなと黒スーツに頬を寄せた。


ーブラックベリーをひとつまみ
(烏間先生だーいーすーきー!)
(はぁ・・・)

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