「何か作るのかい?」 「おやつ。白玉作るよ」 「オッ、じゃァ、オレも手伝うぜ」 「ありがと。じゃあ五右ェ門は白玉をこねて。私はあんこ用意するから」 鍋の準備をしていると五右ェ門がやってきて嬉しいことに手伝ってくれるという。 手際よくたすき掛けをして腕をまくると、ボウル片手にキョロキョロしだす。あ、白玉粉出し忘れてた。 「ごめんごめん、白玉粉ここ」 「どこに行っちゃったのかと思ったヨ。これをどうすればいいんだ?」 「ちょっとずつ水を混ぜて練ってくの」 「ンー分かった」 あんこもいいけどきな粉も欲しいな。フルーツポンチに入れてもおいしいんだよな。 これからできあがる白玉を改めてどうやって食べようか思考を巡らせていると、五右ェ門が肘で小突いてくる。 「なァ、これどれくらいになればいいんだい」 「耳たぶくらいのやわらかさでいいみたいよ」 「フム、どれ」 「ひゃ、ちょっと!」 粉を混ぜていなかった方の手で五右ェ門が触ったのは、私の耳たぶ。しかもやわらかさを確かめるためにこねくり回してきたので、くすぐったくて声を上げてしまった。 「こういう時って自分のを触るもんじゃない?」 「イヤだって、キミのを参考にした方がおいしくできそうだからな」 「もう、五右ェ門のだって同じことで……って鍋、鍋、あつっ!」 「オイッ、大丈夫か……って、何でオレの耳たぶを触るんだよッ」 「近くにあったから、つい」 沸騰してふきこぼれかけていた鍋を慌てて触ってやけどをしかけてしまったので、今度は私が五右ェ門の耳たぶを触った。ひんやりしていて気持ちがいい。 「ほらね、やっぱりやわらかさ一緒だよ」 「どうかな……どうせ食べるならオレはキミの耳たぶの方がいい」 「私は五右ェ門のがいいけどなあ……」 「じゃァお互いので作りゃいいヨ。その前に手冷やしておくんだぜ」 「はーい」 そんなこんなでできあがった白玉を器に盛って、あんこときな粉を絡めて食べる。食べる段になってもまた五右ェ門が耳たぶを触ってくるので、耳たぶが伸びてしまうんじゃないかとちょっとだけ恐ろしくなった。 その日は結局一日中、ことあるごとに五右ェ門が耳たぶを触ってくる耳たぶデーと化したのだった。 ← |