「はい、箱とマグカップ、どっちがいいですか?」 「ばかにしておるのか。せっしゃをねこかねずみだとでもおもっておるのだろう!」 「ま、そう思わんでもありません。大きさ的に」 どん、と用意したるはお菓子の空き箱と使っていないマグカップ。その中に綿を敷き詰めて布で覆い、簡易ベッドのようなものをこしらえた。ごえもんさんの寝床にするために…。きっと怒られるだろうなと思ったら案の定だった。でも、いつもどこに隠れているのか知らないが、何か一つここという場所があった方がいいのではないだろうか。というのが半分。ねこ鍋やカップねこのようなものが見られるのではないかというワクワクが半分。半分は下心が占める理由なのは間違いないが、私なりに色々と考えたのだ。それをこうまで跳ねのけられるとは…。 「なまえ、いっておくがな、せっしゃはしょうどうぶつではないのだぞ。そこをかんちがいされてはこまるというもの」 「まあまあ、そう言わずにちょっとベッドインをばしてみて下さいよ。結構ふわふわに仕上げたんですよ。自信作です」 「ふわふわなどというもんだいでは、っおい、またつまむか!」 「まずは空き箱さんからごあんなーい」 「おぬし、いつかいたいめに…おおっ…!」 ほうらやっぱり言った通りでしょう。自信作なんですってば。 今やごえもんさんはふかふかの即席住み処に夢中だ。座ってみたり歩いてみたり綿の感触を確かめてみたりと、ひっきりなしにふかふかを堪能している。これはごえもんさんにも私にも好感触か。ごえもんさんはもう座って和んでいるし、顔が夢見心地だ。 それをにたにたと眺めていると、ハッとしたごえもんさんが急に居住まいを正し始めた。 「ふ、ふん!わるくはないな、わるくは」 「ふっふーん、そうでしょそうでしょ!じゃ、次はマグカップの方へどぞ」 「つまむなっ…ぬおっ」 マグカップは空き箱と比べると広さはないが、その狭さが秘密基地のようで心地良いはず!例えばソファとソファの間に手を差し込むときのような、そんな心地良さだ。 そしてその予想は見事に的中したようだ。見よ、ごえもんさんのくつろぎ具合を。マグカップの内側に背中を持たれかけて満更でもなさそうな顔をしているではないか。 「どうですか、ごえもんさん、住み心地は良さそうですか」 「うむ、うん、そうだな。そうわるいものでもない」 「へへへ」 「なにをわらっておるんだ。せっしゃはだな、せっかくおぬしがよういしてくれたものをむだにせぬようにと…」 「Hahaha」 「おい、わらうのはよせ!」 そんなわけで、ごえもんさんの住み処はごえもんさんの希望により箱とマグカップの両方ともになりました。何とわがままなことでしょう! ← |