「湯加減はどうですか?」 「うむ、しょうしょうあつい」 「水を足しましょうか」 みかんの果汁まみれになったごえもんさんのために、お椀にお湯を張ってあげた。お風呂の代わりである。あの目玉だけのおやじさんのようだ。 全裸は恥ずかしいとのことで、褌(まさかとは思ったが下着が褌だったことには驚き)だけは外さないでぽちゃんとお椀風呂に浸かっているごえもんさん。その脇からちょろちょろと水を足す。もうよいぞとお声がかかる。水を置いて、私はその横で着物を洗う。洗濯機には掛けられないから手洗い。もう一つお椀を用意してごしごしとやる。 「なにからなにまですまんな」 「いえいえ。小さい頃のお人形遊びを思い出しますよ」 「ふむ…」 洗った着物を絞って広げたタオルの上に置く。水気を切ってドライヤーをあてる。ごえもんさんにとってはこの着物が一張羅だから、すぐに着られるようにしないと風邪を引くかもしれない。 「せっしゃそろそろあがろうとおもう」 「はい、タオル」 「かたじけない」 「拭きましょうか?」 一応小さめのタオルを渡したがそれでもやっぱり拭きにくそうにしているごえもんさんを見て助け船を出す。タオルと格闘しているごえもんさんをひょいと持ち上げて、手の上でごしごしと拭く。もぞもぞとした動きがハムスターのようだ。 「なにをいたす、なまえ!」 「拭きにくそうだな…と思いまして」 「おのれでできるぞ、おっ、ぷ」 「まあまあ、ここは私に任せなさい!髪の毛も乾かしましょう」 「ちいさいからとなめておるな!」 「何だか世話を焼きたくなる衝動が湧いてくるんですよ…」 「うぬぅ…あまりなめるといたいめをみるぞ、ぬおっ!」 「わ、風強すぎた」 ドライヤーのスイッチを入れると風が強すぎてごえもんさんが吹き飛びかけた。 何か凄まれたけど、小さいから気にしない。 ← |