どうしようもなく飲み込みきれないことが立て続けにやってきて、我慢できなくなった。 飲み込みきれないことはいつまでも私の中に留まってはくれない。いずれ溢れ出す。その時は今に迫っている。 誰かの背中が欲しかった。しがみつけるくらい大きな背中が。 「…女、俺に抱き付くんじゃあない」 「…………」 刺々しい声音が責めてきた。 怖かったけど、今は離れて一人になることの方がもっと怖かった。斬られてもいいくらいの覚悟は持っていた。 「オイ、聞いてるのか」 「……ごめんなさい」 「謝るくらいならハナっからやらなきゃいいダロ」 「…うん、そうだね」 カチャ、と五ェ門が斬鉄剣を持ち上げた。 今の私の言葉が五ェ門の琴線に触れたのだろう。分かっていながら動こうとしない私を、愚か者だと思っているに違いない。愚か者は斬るに限る。五ェ門ならそう思うはずだ。 「モノには加減ってモンがあるぞ」 「……うん」 「…………」 「……ぐす」 「なっ!?」 堪えていた涙がとうとう流れた。 五ェ門が怖かった、というのが主な理由ではない。それも少しはあるが、大きな理由は別にある。 初めてすがりついた背中が、思っていたよりも広く温かかったからだ。 「何を泣くんだ!」 「ううん…っごめんなさい」 「オレのせいか」 「五ェ門のせいじゃ、ないよ…」 「なら何故……これだから女はイヤなんだ」 そんなことを言いつつ私を振り払うこともせずに、五ェ門は膝に拳を固めて私を受け入れてくれた、ようだった。 不器用ながら滲み出すそれは、五ェ門の優しさという奴だった。 ← |