※大したオチがない 部屋に入ると、誰もいないように見えた。しかしよくよく聞くと、規則正しい寝息のような音がすーすーと聞こえる。そしてこちらに背の向いたソファの端から見える足先。五右ェ門はソファをひょいと覗き込んだ。 「ヨク寝てらァ」 「ぐー」 シエスタといったところか。ばっちりと昼寝をかますソファの主に、五右ェ門は不満を覚えた。 わざわざ探して来たんだぞ!それが何だ、気持ち良さそうに寝やがって! しかし五右ェ門、特に探していた理由も用事もないのである。単純に構ってやろうという体で構ってもらうために来たくらいなものだった。 「起きろヨー」 「すー」 五右ェ門はトントンと腕を叩いて睡眠を邪魔してみる。だがびくともしない。昼寝の割に眠りが深いよう。 「起きろってのォ」 「んー…」 ソファの前面に回り込んで、手にした流星の先で眠れる人の頬をつつくと、流石に顔をしかめた。けれど、起きるまでには至らない。虫でも払うような動作をした後、体勢をより縮こまった形に変えてしまう。 ここまで来ると五右ェ門の中で意地のようなものが生まれてくる。それと同時にある楽しさも見出していた。 「ずいぶん饅頭みたいな頬してるんだなァ…」 「むぅ…」 流星の先でつつく頬の感触が信じられない程のやわらかさだったもので、五右ェ門は流星を脇にやって直接指でつついてみた。言葉にしたように饅頭か餅といったような感触が指の先から伝わってくる。 寝息が呻きに変わっていくも、五右ェ門はさして悪びれた様子は見せない。起きるならそれでよし、起きぬならそれもよし。もはや五右ェ門はやわらかな頬の虜となっていたのだ。 「ウーン、不思議なモンだ…オレと全く違う」 「ぅー…」 そして五右ェ門は全く油断していた。扉に近付いていた足音など耳にも入らず。 「どうしてまァこんなに…」 「ワッ、五ェ門チャンが寝込みを襲ってる!見ろヨ次元!」 「オッ、これはマズイ時に来ちゃったかな、オレ達」 「ンッ、ルパン、次元ッ!?」 ギャッと肩を跳ねて驚いた五右ェ門から飛び出した声があまりにも大きく、ソファの上の人物を起こすには十分な声量だったために五右ェ門にとっては嫌なタイミングで眠り人は目覚めてしまった。 「んーうるさい…あら、皆さんお揃いで」 「オイ、良いコト教えてやるヨ。今な、五右ェ門がアンタを…」 「違う!違うぞッ、襲おうとしてたンじゃァない!」 「襲う…?五右ェ門…私の事をそんな目で…」 「オレはただ遊んでただけでだな…」 「ヒドイ!私とは遊びだったのね!」 「そうじゃないッての!」 この後五右ェ門はニヤニヤ笑う三人に囲まれていいようにからかわれた。 もう二度とほっぺなんて触って遊ぶもんか、と思った五右ェ門だったが、時たまあの感触を指先が思い出してしまうのである。 ← |