ゴエモンアソート、つまりゴエモンの折り詰め! | ナノ



※新シリーズ(〜峰不二子という女〜)の放送前に五ェ門の設定画を見てそこから妄想した五ェ門。新シリーズの五ェ門とは全く趣が異なるので、これは捏造になる。
※主人公は堅気の世界の人間ではない。つまりルパン達と同じ世界に生きる
※そのため少し暴力的な表現、言葉が出てくる恐れあり
※苦手な方は自身とご相談を




ごろんと仰向けに転がった男を上から覗き込む。
生きてんだか死んでんだかな顔は汗まみれで、長めの前髪が鬱陶しく顔半分を覆っている。ピクリとも動かないクセに刀だけは頑固に握り締めて離しそうにない。
困るよ、全く。でっかくため息を一つ吐き捨て、吊り上がった眉の間目掛けて手にしたバケツを引っくり返してやった。



「っ、ゲホッ…」

「お、生きてたかい」



空になったバケツをその辺にうっちゃって、屈み込む。放り投げたバケツが乾いた軽い音を立てて転がっていく音を背後に、目の前の兄ちゃんの様子を探る。瞼がピクピクと痙攣して、一気に開かれた。
一呼吸もなく次の瞬間には、ピタリと首に冷たい刃。抜いたのは見えなかった。



「おいおい、命の恩人を殺ろうっての?荒っぽいね、兄ちゃん」

「………」

「止めときな。アンタが私の首ィ刎ねた瞬間に、腹にズドンだよ」



悪いがこっちも武器はある。
コッソリ腰から抜き出した愛銃を兄ちゃんの腹に押し付ける。針のように鋭かった眉が微かに揺らいで、事情を悟った。
ああ、ケガしてるね。血まみれなワケだよ。多分、今こうしてんのもやっとなはずだ。
片眉をツと上げて目だけで、どうする?と兄ちゃんに問う。兄ちゃんはおっかない瞳に一度だけ悔しさを映して鞘を持つ手を眼前に持ち上げた。目だけは油断なくこっちを睨め付けたまま、ふーっと吐きだす息に合わせて刀身を白鞘に納めて行く。喉元でしまわれていく鈍い輝きが完璧に納まるまで、こっちも手に握った愛銃の引き金には手を掛けたままでいた。
ちん、と軽い音で光を包まれた刀身は、ほとんどこっちに対する殺気を失っていた。



「…女は斬らん」



とてもじゃないが、そんな風には思えない目だった。ただまあ、斬らないと言ってくれたんだからそういうことにしとこう。だがまだ何があるかは分かったモンじゃない。愛銃を腰の位置で構えたまま相手の様子を窺う。
こんなことなら転がしたまま放っときゃ良かった。



「水を掛けたことは許してやる」

「って、ちょいと待ちなよ!そんな身体でどこ行こうってのさ」



ゆらりと立ち上がった身体が一度大袈裟に膝を落としてから、それでも構わないというように無理矢理この場を立ち去ろうと情けなく足を引きずりだした。口だけは達者だが、それもこのままにしておけば直に聞けなくなるくらいにはマズイ状況だろう。大して進みもしない一歩の内に地面が汗だか血だかさっき掛けた水だかで染まっていく。
見てらんない、というやつだ。



「怪我の手当てくらいしてやるよ。それくらいしなくちゃ、アンタいつか死んじまうよ。いつかじゃない、すぐにでもだ」

「構うな」

「構うよ。どうせまたすぐぶっ倒れるよ、そんなんじゃ」

「………」

「悪いようにゃしないよ」

「…何故だ」

「あん?」



振り向いた反動で崩れそうになる体勢を立てた剣で支えて、目だけはいやに鋭く胡散顔で理由を聞いてきた。そらそうだ。今さっきまで鉛撃ち込むかって態度だった女の親切なんて気味が悪いに決まってる。
モチロン、理由はちゃんとある。そもそも、バケツ引っくり返したとこからちゃんとあるんだよ。



「何で手当てすんのかって?そりゃ、営業妨害になられたら困るからだよ。私、そこできったないホテルやってんだ。入り口に死体が転がってるようなホテル、誰も使おうと思わないだろ?」

「………」

「病院まで連れてってやってもいいけど、まともなトコまで行く内にアンタヤバそうな気ィするからさ。ウチで一応休んでいきな」

「要らん、世話…っを…」

「あぁ、おいっ!ほらな、やっぱりヤバかった」



立ったまんま気絶かまそうとした兄ちゃんに駆け寄って支えてやる。
ずるずると半分引きずって自分のエイギョードコロまで取って返す。
生きてたんなら初めっから手当てはするつもりでいたから用意は出来てる。お人好しなのは分かっちゃいるが…。



「よっと。なあアンタさ、すっごい…」

「………」

「命を奪う目だね」



聞いてても聞いてなくても構わない。思ったことがなんとなく口を突いて出た。兄ちゃんの印象。外れちゃないと思う。
そういう自分の言葉に今更ながら気付く。



「そういや、一振りの刀にその風貌…あんたもしかして…。いや、いやいや、イヤなもんだね」



まさかね。
最近世間が騒がしくってかなわないよ。







――――――――
おっかないものでどうもすみませんでした。
新シリーズの諸々の印象から、おっかないイメージがしたものでこんなものになってしまいました。五ェ門が笑わなさそうだし、何をどう話すのかも見当がつかない…。
でも楽しみです。
しかし、新シリーズはなんて略せばいいんだろう…4期という感じがしなくてだな…。



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