「五ェ門でしょう!」 「分かるのか」 「そりゃもちろん分かりますよ、匂いでね」 「拙者匂うか…?」 「そうじゃない、そうじゃない」 今、面は確かに五ェ門のそれではない。いかにもその辺にいそうな、警察官のナリとツラ。ルパンお得意の変装マスク、それを五ェ門は被っている。 ぱっと見は本当に普通の警察官。でも、分かる人が見れば分かる。何となく漂うオーラは、その辺の人には備わっていないものだ。 五ェ門も、いざとなりゃこれくらいの変装はするけど、やっぱりルパンよりは完成度が一段下がる。 「五ェ門だぞーっていうのがなんとなーく分かるんだ」 「完璧だと思ったんだがな…」 「見た目は完璧だよ、素晴らしい」 ソファに腰掛ける五ェ門の前にしゃがみこむ。近くで見るとより変装のすごさが分かる。見た目だけならば、何の問題もない。 ジロジロ見ていると、自然と目が合った。目は五ェ門の目だ。でも、鼻はマスクの下だ。眉もかな。それじゃ、口は? 「むっ…」 「ん…マスクか」 「お主、今…」 「口付け致した」 「不意打ちとは、卑怯だぞ」 「五ェ門から一本取ったり!」 すると五ェ門はべりりとマスクを剥がした。間髪入れずに、私の唇を捕まえる。 一瞬だった私のに対して、五ェ門のはざっと五秒ほど。倍返し以上に返されてしまった。 「拙者が二本取って、二本勝ちでござる」 「…っ、負けず嫌いめ」 「いや、マスク越しは遠いな。距離ではなく、感触が」 「確かに。私は直が好きだな」 「同感だ。もう一戦、交えても良いのだぞ?」 「おーっし!来い!」 見た目警官、中身五ェ門でもそれはそれでいいけど、見た目五ェ門、中身五ェ門ならなお良し!ってとこかな。 「おいおいあいつら、仕事前に何イチャついてんだよ。見てらんねぇぜ」 「とか何とか言っちゃって、バッチリしっかり見ちゃってる次元ちゃんなのでした〜イテッ!」 「そろそろ時間だって、言ってこいよルパン」 「オレ様には無理よ〜だってあの気持ち分かるモ〜ン」 「不二子〜ってか。ハッ!どいつもこいつも…」 ← |