ゴエモンアソート、つまりゴエモンの折り詰め! | ナノ



扉の先は正に地獄絵図。目も当てられないほどの惨状だった。床に転がる瓶、瓶、瓶!缶もちらほら、つまみも見える。その隙間に力なく転がる大の男三人は、情けない呻き声を吐き続けていた。
予想はしていたがそれ以上に酷く、私は大きく溜め息を吐かせてもらった。



「こんなになるまで呑む人がありますかっ!」

「ぅー、でけぇ声出すなよ…頭に響く…」

「悪いですが次元さん、響かせるように言ってるんです」

「おー助かった〜この二日酔い何とかしてちょーだい」

「私を呼んだのはそのためなんですね、ルパンさん」



電話でルパンから至急来てちょの呼び出しがあって駆け付けてみればこの有り様。
昨日の夜、今夜は呑むぜー!なんて大騒ぎしていたルパンたちに私も誘われたが、断っておいて正解だったようだ。
この中にいたら、私も同じ目に合っていただろう。それだけは勘弁。これは悪酔いすぎる。



「ほら五ェ門、前はだけすぎだよ。ちゃんとしなきゃ」

「んむ…お主か…よく来たな、ゆっくりしていくと良い…」

「何言ってるんだかもう…」



部屋の隅で斬鉄剣と酒瓶を抱えてだらんと寝転んだ五ェ門は目付きが少々危うい。言ってることも、やあウェルカム!な内容で危うい。
しゃっきりしろの意を込めてぴしゃんとデコピンをしてやった。むぅっ、と鳴いた五ェ門がぎゅっと目を閉じた。



「にしても、よくもこれだけの量を…」

「だってよぉ〜五ェ門が呑んでた日本酒美味そうだったんだも〜ん…なぁ次元ちゃんよ〜」

「おめぇ声がでけぇよ…もっと小さな声で喋んな」

「拙者は、拙者は違うぞ…拙者は無理矢理わいんだのすこっちだのを…」

「こりゃだめだ」



とりあえず三人に水を渡して、二日酔い醒ましに良さそうなものを買いに出ることにした。多分このアジトにはまともなものはないだろうから。



「ちょっと買い物に出てくるよ。まとめられるものはまとめておいて。あ、出来たらでいいから」

「しょーじきしんどいっ!」

「俺ぁもうおめぇとは呑まねぇぞルパン…」

「そう言わずにまた付き合えよ〜頼むよ〜」

「何でもう次に呑む話してんだ…その前にまずこの二日酔いをどうにかしろよ」

「いってきまーす」



ぐだぐだと次元にダル絡みするルパンの言葉を背にアジトを出る。
何を買って来たものか…二日酔いに効くのは確か…。なんてことを考えながら歩いていると、目の前の路地から男が出てきて私の前に立ちはだかった。邪魔は勘弁して下さいよと思いつつ避けて行こうと男の脇を抜けようとした途端、腕を取られた。何となく予想はしていたが思ったよりも強い力で引っ張られて数歩よろめく。ぐっと強い目線を寄越すと、男は隙っ歯を見せつけるように意地悪く笑った。いつの間にか周りを男たちに囲まれている。



「よぅ姉ちゃん、オレたちに金ぇ恵んでくんねぇかな」

「なァ頼むぜ。何なら金でなくたっていいんだぜ、むしろそっちの方が…」

「へへへ、いいだろぉ姉ちゃん?」



困ったな…いいカモと思われちゃったのかもしれない。アジトに来るまでは何ともなかったのに、出た途端すぐこれだ。今お金はちょっと買い物する分しか持っていないし、逃走用の道具は煙玉しか持っていないや。走ればすぐアジトに着くだろうし、ここはいっちょ…



「そこの輩共…」

「あん?」

「何だおめぇ?」

「女相手に何をしておる」

「五ェ門っ!」



そんなピンチに現れたのは頼れる我らの五ェ門さんだった。アジトで寝っ転がってたはずじゃ、とも思ったがいやはや絶妙なタイミング。
男たちが拳を振り上げて五ェ門へ殴りかかるが、ご愁傷様、いつもよりちょっと怪しい剣さばきの五ェ門にきっちり返り討ちにあって服を失った。青ざめた男たちは悲鳴を上げて散り散りに去って行った。酔拳ならぬ酔剣か、斬鉄剣を鞘に収める動作も危うい。



「…情けない奴らめ」

「ありがとう五ェ門、助かったよ」

「お主が余りにも遅いので探しに来た…」

「まだ出てから五分も経ってないけどね」



ちょっと、いやかなり酒臭い五ェ門が私の腕を取った。来た道を引き返している。アジトに帰るつもりらしい。



「ちょ、五ェ門。私今から買い物に…」

「そんなものはどうでも良い。また襲われたらどうする」

「そうだけど、でも二日酔い醒ましたいでしょ。あ、じゃあ五ェ門付いてきてよ」

「ならん。帰るぞ」

「ええー…何ですかそりゃ…五ェ門ーすぐそこの店だからさ」

「嫌だ」

「嫌だってあなた…」



二日酔いで辛いのはあなたたちでしょうに…。まあ、ルパンたちには熱いシャワーを浴びてもらうことにしよう。
しかし今日はよくよく腕を取られる日だな、と五ェ門に引っ張られながら思った次第です。



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