「…え?」 「…は?」 お風呂から上がろうと扉を開けたら、目の前に褌一丁のお侍さまがおられた。私も五ェ門も驚きで固まる。お互いの間に妙な時間が流れる。 ぱちんと何かが弾けた瞬間、私たちはようやく状況を理解する。 「えぇえ、うわ!」 「ぬおぉ!?」 「何て格好なさっとるんですか、五ェ門さん!いや、お風呂に入るから間違っちゃないけど驚きましたわ!」 「いっいや、拙者先程まで寒中水泳をしておった故…決してこの格好でウロウロしていた訳では…いや、ウロウロはしておったが何も見せびらかすつもりではなくだな…その…すまんッ!!」 割と脱ぐ人だから慣れていたつもりだけど、こうして急に目の前にぼんと現れると心臓に悪い。 慌てて扉を閉められたが、何故かまだそこにいる。扉の向こうにぼんやりとした背中のシルエットが浮かび上がっている。 何というか、これじゃ動きようがない。上がろうと思っていたのに。というより、何故そこにいる五ェ門よ…! 「あの〜…」 「はっ!?何だ、何用か?」 「なんでそこにおられるんですか…なんて…」 「ぁ、う…じゃ、邪魔であったな…失礼した」 「待って!あのさ、五ェ門…」 「うむ…?」 「一緒に入る…?」 「!?」 ぶわっと一気に赤くなる顔がほんの一瞬だけ喜びを見せたが、すぐに取り繕われた。分かりやすい人だ。 「何を申すかお主!」 「…って、言って欲しいのかなって」 「ば、馬鹿も休み休み言え!」 「素直じゃないなあ…ごめん、上がるよ」 「ああ、そうせい」 「…素直に言ってくれればご一緒してあげるのに」 「っ、お主な!」 「はいはい、すんませんでしたー!」 いつかはご一緒したいな五ェ門風呂…なんて、すごく無理そうな希望を私は抱くのであった。 ――――――― 乾布摩擦をしていたことにしようと思ったけど、乾布摩擦は下まで脱ぐ必要がないと思い寒中水泳にしました。 ← |