「荷物はワシが引き受けよう」
スーパーでの買い物帰り、二人が両手ずつで抱えるほどの荷物を家康さんが全て持つと手を差し出してきた。
流石に手に余る量で、私は四つある袋の内一つくらいは持つと訴えたのだが、女子が重い思いをする必要はないよ、と断られてしまった。
「そんなに気を遣わずともいいんだぞ。お前はもう少しワシを頼ってくれ。ワシ、そんなに頼りないか?」
「ううん。ごめんなさい。こういう風に優しくされることにあまり慣れてなくて…ね」
「そうなのか?」
それは酷いな、と両手に荷物を持つ家康さんが眉を寄せた。
全く優しくされたことがない訳では勿論ないが、現代の日本では事あるごとに紳士的に接してくれる男性はほとんどいないと言っていい。だから家康さんの優しさには驚かされることが多いのだ。
そう言うと家康さんは、ふうんと唸った。あまり納得がいかないらしい。
「それは男共が悪い。世の流れのせいにして、人への思い遣りを怠るなんて許せないな」
「家康さんは優しいですね。きっと皆に好かれてるんだろうなあ、って思います」
「ん、まあ、そうなのかな?ワシとの絆を信じてくれる者も多い。だがな、ワシがなまえに優しくするのには別の理由もある」
「へぇ!何でですか?」
聞きたいか?と勿体ぶる家康さんに、頷いてみせる。そんな私の様子を見て嬉しそうな顔をすると、飛びっきりの笑顔でさらりと言ってのけた。
「何だかな、お前を見ていると特別守ってやりたくなる衝動にかられるんだ。不思議だ。恋って奴かな」
その言葉と笑顔は、太陽と見紛ごう眩しさだった。
←