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○新しい仲間
「お待たせしました!!」
「別れは済んだかい?ミストラス」
「はい。ついでに騎士団から任務を与えられました」
「確かササンの騎士は特別な任務があれば、外界に出る許可が下りるそうですね」
「騎士王なりの息子を送る計らいってやつかな?」
ミストラスはどこか誇らしげで、嬉しそうである。
「これでようやく外に…嘘みたいです」
「おっと、外に出られて嬉しいのはわかるが、仕事はしてもらうぞ。
ササンとの同盟は交易契約でもあるんだ。ササンとの連絡役はお前が担当するんだぞ」
「わぁ〜!!そうだった!俺にそんな仕事務まるかな!?」
「大丈夫だよ!」
近寄って声を掛けるエナが、少し気に食わないと思う。誰でもそうやって仲良くなれてしまう所。彼女の生まれ持った才能なので変えられはしないが。
「そうかな!?エナちゃんにそう言って貰えると安心するなぁ」
「あ、そう!?よかった!」
「うん!エナちゃんと一緒に外の世界を見られるなんて!!」
「おめでとう、外の世界は楽しいよ」
ミストラスはエナの背丈までかがんで、彼女の手を取り頭を撫でている。
それを見て苛立った。2人を引き離し、急かす。
シンとヒナホホが後ろで何か言っていたが、それを気にする余裕など、私には無かった。
「………あいつ、一丁前に嫉妬してるぞ」
「もうそういうお年頃か」
○ちびスパルトス
「兄上!お待ち下さい!」
「って言って泣いてたスパルトスが、こんなに大きくなったんだねえ」
「ああ、懐かしいですね」
「可愛かったなぁ」
「そうですか?
でもすみません、あの時私は兄上を攫って行った嫌な女だと思ってました」
「トゲがあるね」
「あ、兄上に十八番使ったんですか?
えっと、色仕掛け」
「そんな怪しい目されても、使ってないよ。
シンバに命じられた時しか使わないって決めてるの」
「この前ジャーファル殿に使ってましたよね」
「そっ、それは恋愛が上手くいくようにだよ」
「…へえ」
○夫婦の街中インタビュー
これは2人が新婚旅行に行く前の話だ。
「あ、すみません、記者のハラヲと申します。少しお時間頂けますでしょうか?」
「何でしょうか?」
「今、情報誌の方で恋人を対象に街中インタビューをしておりまして!お2人があまりにもお似合いでしたから、」
「えへへ、ありがとうございますー」
「こら、エナ、デレない!」
「いいじゃん、ジャーファル。ちょっとくらい」
「あの…宜しいですか?」
「はい是非!ね、良いよね?」
「……はあ、良いですよ」
「ありがとうございます。では、早速最初の質問に…」
*
後日
「王様!大変です!」
「…ん?何だシャルルカン」
「シンドリア国の有名情報誌にジャーファルさんとエナさんが!」
「はあ!?」
「見て下さい!ハラヲって、有名な記者ですよ!」
【王宮恋愛の末に結婚!政務官と先駆隊隊長の新婚生活!】
ハラヲ:お2人は政務官と先駆隊隊長という職についておられますが、仕事での接点は?
ジャーファル:特にありませんよ。ですが、私達は王様直属なので、特別に同じ仕事を言い渡される時もあります。
ハラヲ:特別、良いですね。では、一緒の仕事をしたいとは思いますか?
エナ:思いません。仕事中に思い出すと気が散るので。
ジャーファル:私も同意見です。エナを仕事中に思い出すと集中が切れます。
エナ:でも、何日も会えないとなると顔を思い出して元気を出します(笑)
ジャーファル:前に同じ仕事を任された時、窮地に追い込まれて、2人で死にかけた事がありました。
大切なので、エナを助ける為に必死でしたね。
エナ:私もです。まあ、恋は盲目ですから。
ハラヲ:お互いに背中を任せるほど信頼しているのですね。
エナ:信頼していますよ。
ジャーファル:王様の為に戦っているので、エナの為に戦うことはありませんが、生きて欲しいとかいう贔屓はあります。
ハラヲ:贔屓ですか。何か、絆を感じますね。そんなお2人の出会いは?
エナ:9歳の時彼に攫われました。
ハラヲ:へ!?
ジャーファル:人聞きが悪いですね。
……あながち間違いではありませんが。
それだけ早くにエナの魅力に気付いたという事にして下さい。
ハラヲ:成る程。攫いたいほど夢中だったと。
ジャーファル:余計ですよ。
ハラヲ:はは、すみません。
先に惚れたのは彼の方なんですね。告白はどちらから?
エナ:秘密です。
ジャーファル:話せば長くなりますよ。
エナ:ここでは話しきれませんから。
ハラヲ:そうですか、残念です。
しかし、私はめげませんよ。プロポーズはどちらから?
ジャーファル:私からですよ。
エナ:ですが、彼は酔っ払った時に結婚しましょう、とよく言っていましたよ。
ジャーファル:え!?そんなこと言ってないですよ!
エナだって、酔っ払うと結婚したいって甘えてきたくせに!!
ハラヲ:プロポーズの練習は常日頃からしていらしたんですね。
では、話を変えて。お互いに嫉妬する事はありますか?
エナ:彼、最近は花にも嫉妬しますよ。
ジャーファル:しませんよ。
エナ:私はクーフィーヤにも嫉妬します。
ジャーファル:………。(赤面)
ハラヲ:彼はデレデレですね。
さあ、恥ずかしい話ですが、初夜は何時ですか?
ジャーファル:初めて一緒に寝た日ですよね?それなら、私が10、エナが9の時には、
ハラヲ:いやいやいや、添い寝では無くて…。
………体を重ねた事ですよ。
ジャーファル:え、それはちょっと抵抗が……。
エナ:私が16、彼が17の時ですよ。
ハラヲ:おお、平然と答えていただきました。彼は頭を抱えていますが、最後の質問に移らせていただきます。
今後、どんな家庭を作りたいですか?
エナ:今まで通りで。今に満足しています。私には勿体無い幸せです。
ジャーファル:2人の時間を十分にとって、その後は子供が欲しいですね。まあ、エナにその気は無いようですが。
エナの事に関しては欲張りたいです。
エナ:いや、大丈夫だよ、そんな。
ジャーファル:私の本当の理想は、エナとの子供を作って、エナに休暇をとってもらう事ですね。
エナ:私も本当は、ジャーファルの子供を産みたいです。けれど、王様に恩を返して無いので。私はまだ戦います。
「あ、…どうしました?王様?」
「エナ…俺のせいで子供作らないみたいじゃねぇか。
よし、シャルルカン」
「はい!?」
「2人が旅行から帰ってきたら、媚薬の香を焚いてジャーファルの避妊具を取り上げて部屋に閉じ込めとけ」
「はぁ!?」
28.4.13
29.1.3 改訂
久しぶりの短編集です。
新婚旅行をする前のジャーファル(26)エナ(25)の話もありましたね。
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