ジャーファルと彼女の亀裂

エナ「ただいま!」

ピスティ「おかえり!エナさん!」

エナ「ピスティ、迎えに来てくれたんだね」

こうしてやっとシンドリアへ帰還したエナ。シンドバッド達とは行き違い、1人で帰ってきた。

エナ「シンバにしか連絡入れていなかったから、誰か待っててくれるなんて思わなかったよ」

ピスティ「ジャーファルさんが良かった?」

エナ「いや、誰が来ても嬉しいよ。けど、今ジャーファルは何となく顔を合わせにくいかな」

ピスティ「喧嘩したの?」

エナ「そういう訳じゃないんだけどね」

練紅玉と友達になってしまったこと、夏黄文の恋人扱いされてしまったこと。
事情を説明されたピスティは、顎に手をあててニヤリと笑った。

ピスティ「なるほど〜ジャーファルさん嫉妬しちゃうね」

エナ「向こうの姫様と友達になるなんて大ごとでしょ。
ジャーファルに余計な負担は欠けたくないから、黙っておこうと思って」

ピスティ「そっか、内緒にしておくよ」

エナ「ありがとう、ピスティ」

ピスティ「あ、そうそう、アラジンとモルジアナとアリババがここの食客になったんだよ」

エナ「へえ、あの3人ねぇ、話した事はないけど」

ピスティ「エナさんなら仲良くなれるよ!」

エナ「それならよかった」



王宮に帰ってからは、風呂で汗を流して着替えを済ませた後にジャーファルを探した。

ジャーファル「エナ!お帰りなさい!」

エナ「ただいま!ジャーファル」

ジャーファル「おいで」

エナ「うん!」

エナは、手を広げて待つジャーファルの胸に飛び込む。

ジャーファル「エナ、少し痩せました?煌帝国で食事は十分に取れたのですか?」

エナ「ああ、うん、十分過ぎるくらいに」

ジャーファル「そうですか」

エナ(はあ、ほぼ王宮の料理を食べてたなんて言えないなぁ)

ジャーファル「今夜こそは一緒に寝ましょうね」

エナ「いや、今夜は寝かせないよ」

ジャーファル「ふふ、挑発ですか」

エナ「下剋上です」

ジャーファル「勝てるものなら」

ピスティ「あ、ジャーファルさんと、浮気者のエナさあがっ!」

エナ「なんで浮気者?誤解されちゃうよピスティ!」

ジャーファル「え?今なんて?」

エナ「いや、あのね?」

ピスティ「エナさん煌帝国で男と諸々出来たんだって!」

エナ「違う!(*)男みたいな友達!」

(*)練紅玉

ジャーファル「…」

ピスティ「…ジャーファルさん?」

エナ「本当に、違うの!」

ジャーファル「まさかエナが、そんな事するわけ無いでしょう」

そう言ってジャーファルは去って行った。

エナ「ピスティ!遠回しに言い過ぎて誤解が生まれやすくなってる!」

ピスティ「へ?」

エナ「どうしよう…」



そして夜になり、報告書を書き終えたエナが2人の部屋のドアを開けると、まだ机に向かうジャーファルがいた。

エナ「ジャーファル…怒ってる?」

ジャーファル「…」

エナ「ジャーファル?」

ジャーファル「へ!?
あ、私書類を徹夜して終わらせるので、お構いなく」

エナ「…わかった」


エナ(怒ってる?それとも大人な対応?でも確実に誤解はされてる)

エナは目元に既にクマができていたジャーファルにそれ以上話しかける事ができなかった。

誤解は解けないまま、2人は少し離れていく。



その後はバルバッドの様子を見る為、密偵部隊が再び偵察に行った。
彼らの偵察はシンドバッド達より長くかからなかった。
シンドリアの王宮に戻ったエナはまだジャーファルと気まずいまま。

そして4ヶ月の会談を終えて、シンドバッド一行が帰ってくる。

彼らが帰ってきてからひと段落して、エナとシンドバッドは密偵部隊の報告を行う為、王室に入った。

シンドバッド「聞いたぞ。お前…練紅玉と友達になったらしいじゃないか」

エナ「…はい」

シンドバッド「詳しく話せ」

エナ「煌帝国では兵士に化けていたのですが、兵士の集団行動から外れたところを夏黄文殿に見つかってしまい、
命を保障する代わりに姫様と友達になる、という話を持ちかけられたのです」

シンドバッド「それに乗ったと?」

エナ「はい、煌帝国には私達の存在が割れています」

シンドバッド「そうか…」

エナ「申し訳ありません」

シンドバッド「謝るのは俺じゃないだろ」

エナ「え?」

シンドバッド「エナは十分情報を得ている、それで会談に役立つことも多かった。
だが、お前はいつから夏黄文との子供を作ったんだ?」

エナ「夏黄文殿とは何も!」

シンドバッド「どういう事だ?エナはジャーファルの恋人だろ?」

エナ「夏黄文殿は、姫様に私を恋人として紹介したのです」

シンドバッド「…なるほど、つまりお産で帰国すると言うのは都合良く国を抜け出す理由、と」

エナ「はい」

シンドバッド「エナの意志じゃないんだな?」

エナ「勿論です!私にはジャーファルしか、」

シンドバッド「分かった。話はこれまでだ。
ジャーファルとしっかりやれよ」

エナ「ごめんなさい…シンバ」

シンドバッド「良いよ、何かあったら隠さず言いに来い」



時はさかのぼり、
エナが帰ってきた日、シンドバッドが帰るのはまだ先という日の夜。

ジャーファルは同室で先に眠りにつくエナの前髪を払い、その額に自分の額をくっ付けた。

ジャーファル(あったかい…)

彼女と口を聞かずに何ヶ月が経つだろう、
自分から避けたのが始まりで、彼女も私に寄り付かなくなった。


…煌帝国の男と関係を持ったのは本当かな。

そうしたらエナのこの優しさやあたたかさや、特別な感情はその男に向けられるんだ、
彼女しか持ち得ない嫋やかさ、体も、わずかに開かれた唇も。

もう触れる事を許してもらえないなら、最後は勝手に。
眠るエナに、ジャーファルはひとりよがりなキスをした。

28.3.31
背中を押してやるシンドバッドさま

次は謝肉宴やりますよ
back / prev / next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -