1000年の両片思い



豚の帽子亭。秋の夜空に雲は早足でかけてゆき、月と星が綺麗に広がる夜だった。彼らの夕方から始まった宴会もそろそろお開きか。
外で仲睦まじくはしゃぐディアンヌとキングの声を遠くに聞き、レアはカウンターでグラスを傾けていた。


「よく見てられるなあ。アレを」
「メリオダス様。アレとは」
「キングとディアンヌ。仲良いだろ?」
「ああ、確かに」
「レアはいいのか?嫉妬しないのか?」
「嫉妬?そんなのしませんよ」
「ホントか?」
「ウソです」
「ははっ」

「私は悪魔なんですよ。悪魔は嫉妬します。手に入れたいものは追いかけるし、その先に障壁があれば排除したくなる」
「怖いな。ディアンヌを排除するのか?」
「昔だったらそうしてました」
「じゃあ今は?」
「ははっ!しませんよ。あのお方の....キング様に従いていて色々と学ばせていただきました。
キング様は優しい心の持ち主です。だから私なんかが嫉妬をして割り込もうとしても、あの人を苦しめてしまうだけなのです。誰にでもお優しいから。でもそのために、本当に大切なものを疎かにしていただきたくはない。ディアンヌ様をもう、疎かにしていただきたくはない。例えそれが、妖精王の森を滅ぼす結末になろうとも」
「随分前から知ってるみてぇな口ぶりだな?レア」
「ええ。知ってます。私はキング様より長く生きてますから。大体200年は長生きしてますかね.....。メリオダス様は今幾つです?」
「さ、忘れた。レアと同じくらいじゃなかったかな」
「そうですか。気が遠くなるほど長生きするのは、辛いことでしょう」
「いーや。エリザベスがいるから大丈夫だ」
「私も同じようなものです。キング様と出会ってから、毎日が楽しい」
「まぁ毎日好き放題やってるもんな?」
「ええ。醜い悪魔である私を、あの人は綺麗な妖精の仲間に入れてくださった。あの人と出会って、私の心は救われた。
私に死はないし、あの人にも死はありませんが、きっと死なんてものがあったら、私は一生の間キング様を想い続けますよ」
「そんな長い間好きでいたら、いつか両想いになれるだろ」
「別に、ならなくてもいいですよ。私はキング様が好きで、おそばにいれたらそれで充分。
私を好きになって、あの人が幸せになれるとも思えません」

「悪魔と妖精王、か」
「ね?考えられないでしょ?」
「んにゃ。俺はいいと思うけど」
「メリオダス様はお優しいですね」
「あんま俺を優しいとか言うなあ?あの王様がオッサン姿で泣いちゃうぞー」
「はは!なんですそれ!」


だってキングは、何千年も前からお前だけを好きでいるらしいから。


そんなことは俺の口からはエリザベスに可愛くオネダリされても言えないな。軽く脳内でその妄想をしながらメリオダスはカラになった瓶の底を眺めるのだった。


30.8.25




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