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「海軍は撒けたわね!けど、これからもまだまだ強い敵は出てくるわ。また明日に備えて、今日はおいしいごはんとお酒でカンパーイ!!!」

「「「いやお前誰だよ!!!」」」

スペード海賊団の船に大きなツッコミの声が響く。

「お前ら落ち着け、その女には海軍を撒いてもらった恩がある。次の島まで乗せてやるつもりだ」

「「「何だってェェ!?」」」

各々顔を見合わせて驚いていた。スペード海賊団に女が乗ることなんて初めてではないかとデュースは思い出す。女、と呼べるのは料理を作るバンシー、通称オバチャンくらいなものである。

「こんな別嬪が乗るのかよ」
「海賊やってきて初めて宝見た」
「なんか大切に保存しておいた方がいいんじゃねぇか...」

町でも聞いたが天然記念物、そう呼ばれるほど女の容姿は端麗であった。

「私はスワン・D・レア。海賊よ」

フォークに肉を刺して手本のような笑顔を浮かべたレアは話おえるとすぐ肉を頬張った。

「まさかお前、ひとりで海賊やってんのか!?」

「知らなさすぎるぞ、エース。
この女は白ひげ海賊団 3番隊隊長 雪盛のレア。
女を乗せない白ひげを納得させ隊長の座を実力で奪った」

「そこのゴーグルのあなた、よくご存知ね」

全くもってなんでこの船に雪盛のレアが乗っているのか理解できない上に畏れ多い。エースはこの女の凄さを知らないなんて本当にバカか。


「お前にも懸賞金かかってんのか?」
「うん。でも、幾らか忘れちゃった」
「は?自分の名誉のようなもんだぞ?海賊にとっての懸賞金なんて!なあエース!」
「そ、そうなのか?」
「正直興味がないのよ。何回か教えてもらったはずだけど、うーん」


「お前、なんで海賊になったんだ...?」

「名声と食べ物が沢山欲しいからよ」

名声。そう聞いてエースの目がギラりと輝いた。
だが、デュースには思うところがあった。

「アンタの過去と関係あるんじゃないのか」

レアの笑みが少し引きつったのが見える。構わずデュースは続けた。

「聞いたことがある。スワン・D・ベス。
ゴールド・ロジャーの船の女海賊だ。ロジャーを守る為に自ら処刑台に上がった。
____腹には旦那との子供もいたというのに」

カタン、フォークが机に置かれる音がした。レアの手元からだった。そして穏やかにも聞こえる震えた声で、彼女は答えた。


「私の母親よ。

馬鹿げた話でしょ。あの人には自分と子供の命より、船長の命の方が大事だったの」



「でも結局、無駄死にだった」


スワン・D・ベスの死は無駄だった。ロジャー処刑前の夕刊の新聞にはそう書かれたらしい。元からロジャーは自首するつもりだったからだ。



「私は証明したい。母の死は 人生は無駄じゃなかったと。

そのために名声が必要なの」


その瞬間まで気まずそうに聞いていたエースがポツリと呟いた。


「_______俺とは真逆だな」


「何難しい顔してるのよ。海賊やる理由なんて、何だっていいじゃない。

海賊は自由な生き物。そうでしょ?」


さっきまではどちらかというと上品に笑っていた気がするレアは、今度はニカッと海賊らしく笑っていた。

エースの顔も、心做しか少し晴れている。

その笑顔がやがてエースの心の拠り所になればいいと、女とはずっと同じ船に乗るわけではないのに、俺は呑気に考えていた。


「食べ物は美味しいわよヒケン!ほら、腹が減ってはナンタラってやつ!」
「エースって呼んでくれ。

____ありがとう。お前、良い奴だな」


「うっえ、不味!」
「ここはそういうメシだ。我慢しろ」



30.6.26

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