伊達の『鉄壁』

ただひたすら体を温めること。

「____っ、____ふっ、っ」

常波高校との試合は烏野が勝つことを信じて、俺は常温の体を沸点まで持って行く。

外のランニングが終わったら、縁下相手にレシーブ、スパイク練習。
それも終わったら、伊達工の一試合目を見に行く。
つまり、俺は一試合目は温存されるということだ。

烏養コーチは、もう次の試合を見据えて動いている。
三ヵ月前、打ち砕かれた旭さんのスパイク、届かなかった西谷のブロックフォロー。
龍や他の先輩方にも、欠けていた実力。

二の舞を踏まないため、次こそ勝つためにある、俺の役割だ。

烏野[2]ー[0]常波
25 ー 12  
25 ー 14

勝者: 烏野高校

伊達工[2]ー[0]桜下
25 ー 07  
25 ー 08

勝者: 伊達工業高校


「烏養コーチ、」
「おおおお陽さぁん!おかえりなさーい!」
「お前!どこでサボってやがった!!」
「ばか!陽は一試合目は敵方の視察だよ」
「おお、北来。ありがとな」

「伊達工の試合ですが」
「ああ。澤村、集合かけろ」
「集合!!」
「ハイ!」
「あ!陽てめぇ!トイレ長いっつの!」
「TOTO(とうとう)痔になったか?!」
「痔じゃねぇし!何気うまいこと言うな!」













伊達工、烏野会場入り。


「ゴーゴーレッツゴーレッツゴー伊達工!」
「ゴーゴーレッツゴーレッツゴー伊達工!」

「うぉぉおお!?」
「ビビるのに忙しいな、日向っ。
部員多いチームってそれだけで強そうだよなー。あんなにズラーっと並んで応援とか羨ましいわ」
「龍は彼女欲しいだけだろ」
「あ?バレた?」


「コーチ!先レシーブになりましたっ、コートはこっちで、」

公式ウォームアップ開始。

伊達工にストレート負けてしてからたった三ヵ月・・・
「レシーブ!」
「オス!!」

チームは確実に進化していても、2・3年生のあいだにはどこか『負けるイメージ』が居座っているのかもしれない。
とりあえずこの伊達工に呑まれ気味な空気をなんとか______

「ん ローリングッ!」

「サンダァァァ」


「ッアゲインッ!!!」

くるっ ふわっ


「________?」

「来たァァァ!ローリングサンダーひと月ぶり!!!」←北来
「ノヤっさん!キレッキレじゃねぇか!技名以外!」←田中
「技名もキレキレだろうが!!」←西谷
「「ぷっすーー!!」」←山口月島
「コラコラコラまた大地に怒られるよ西谷!」←東峰
「前のと何が違うんすか」←影山
「アゲインも教えてぇぇ!!」←日向
「「また西谷は・・今の普通に拾えただろ」」←澤村菅原


「よっしァァァ!

心配することなんか何もねぇ!

皆!前だけ見てけよォ!!






背中は俺が

護ってやるぜ!!!」





「「「かっ、こいいいいーー!!!」」」

「ナイス、夕」
「おうよ!」

小さい体でなんつう頼もしさ
守備だけじゃない
リベロの重要な仕事はコートの後ろからのチームの鼓舞

「本当に優秀なリベロだな・・」


公式ウォームアップ終了

烏野高校 vs 伊達工業高校

試合開始三分前

「一試合目見た感じだと、一発目から強烈なサーブが来るはずだ」
「サーブ・ブロックで相手の出端をくじくのが、伊達工の立ち上がりのパターンぽい」
「一本目、レシーブしっかり上げてけよ!」
「ハイ!!!」

「鉄壁を切り崩してやれ!」
「烏野ーー」
「ファイッ、」

「「「オォオオッス!!!!」」」


烏野 vs 伊達工業 サーブ降順
BR 北来MB(西谷Li)/鎌先靖志MB(作並浩輔Li)
FR 影山S/笹谷武仁WS
FC 田中WS/二口堅治WS
FL 日向MB/青根高伸MB
BL 澤村WS/茂庭要S
BC 東峰WS/小原豊WS




リベロ作並のいる所に飛んだ影山のサーブは整えられ、烏野コートへ帰ってくる。
「ナイスノヤ!!」
「おお!拾った!」
「スマン!龍カバー頼む!」
「バック!!」
「ハイ!」
「旭さん!」
「バックアタック!?」


一ヶ月立ち直れなかった。けどバレーはやめないで、ここまできた。
トスを託される。決められる自信なんていつもあるわけじゃない。ここで克服しないと、大地に怒られるかな。またヘナチョコなんて_____

いや、そんなのどうだっていい。
決めなきゃ。ここまで持ち上げてくれた西谷に向ける顔がないだろ。

キュキュッ ドッッッ!


三ヶ月ぶり、鉄壁。超えてみせる!!!



ガガガッッッ ドッ! 

ピッ!
烏野 01 [2] 01 伊達工

「クソッッ!」
「しょうがねえ!切り替えろ!」
「旭さん次次!!」

「旭さんスミマセン!次は拾います!」
「おう 頼む。

でも次は決める!」

「旭さん!!カッコイイっす!」





「伊達工は相手が取るはずだった一点を、一瞬で自分らの一点にする」

影山のふわっとしたトス。日向の最高打点を通ろうと突き抜けるトス。普通の速攻。

「相手の心を折り、同時に味方の士気を高める

最高の防御で最高の攻撃。それが____」


目を開く。狙いを定める。ここが空いてる、そう思って。
ボールを叩いた手を離す直前。青根の手が伸びる。ヤバいっ!防がれる!!
「!?」


「伊達工のブロック」



29.8.29

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