『虹、そろそろバレる頃だ』

「弧月オンリーが?」

『そうっすよ。あの二人のバックには東さん、二宮さんが付いてる。分析力はあっちの方が上っすよ』

『おい出水ー、俺がバカだって言いたいのか?』

『いや、太刀川さんでも頭じゃ東さんには勝てないでしょ』

「誰にも勝てねーよ」

『あ、言ったな虹!』

「柚宇ちゃん、秀次と姉さんはいつものトリガーで来てる?」

『うん。いつも通りだよ』

『それってメテオラ以外コンプしてません?』

「そうだよ。
二人を相手すると弾の種類が多いから、対応が面倒なんだよね」

『弧月とレッドバレットがある秀次がおそらく前衛、ハウンドがある加古は後衛だろ』

「いや、分からんよ?
秀次にはバイパー、姉さんにはスコーピオンあるから。

あの二人は前衛と後衛を決めなくても動ける」

『二人とも射程が広い上に、近距離にも対応できるのが怖いっすね』

「そうだね。なら、どこで勝負かけようか」



「虹。余裕そうだな」


慶さんの読みが当たったか。秀次が前だ。
秀次はもう弧月を抜いている。

『加古さん、レーダーから消えたよ。恐らくバッグワーム』

『三輪はレッドバレットで足封じする気かも知れねーな』

『バッグワームつけた加古さんが後ろから挟んでくるかも』

二人の分析通りだ。三輪が私を足止めする間に、姉さんが援護しやすい場所に動く。出水の言うように背後か、それとも横や斜めか。

早く姉さんの場所を特定した方が良い。

私はグラスホッパーを三つ展開して、建物よりも高く飛んだ。

「アステロイド」

上品な声に余裕かと思いきや、弾数は多め。
迅がこっちに来る前に私を落としたいのか。姉さんも秀次も決着を急いでる節がある。
このくらいなら、シールドと弧月で捌き切れる。

『相変わらずやべーな』

『弧月でアステロイド捌くの初めて見ましたよ。射手の敵だなぁ』



『秀次。虹は加古から落とすつもりだ。援護しろ』

「了解」


間髪入れずに秀次のレッドバレットが向かって来る。

シールドを解いて、角度をつけたグラスホッパーを出し、姉さんのいる方向へ斜めに踏み上がる。
レッドバレットは避けれたが、その隙に姉さんの方は屋内に隠れたらしい。

「旋空弧月」

1秒の旋空で屋上から斬り込むと、建物ごと崩れてゆく。

『いいぞ虹。追い込め』

姉さんが建物から出るタイミングで、もう一度。
私は下降するが、姉さんは出てこない。

「テレポーター使ったのかな」

『うん、テレポーター。加古さんはこの方角。3メートル先の建物だよ』

情報が視界に展開された。
小さな方位磁針が指す右斜め前。目を向けたと同時に、大量のアステロイドが来る。
先ほどのように弧月で捌く余裕がない。片手のシールドで半身を薄く覆いながら瓦礫に身を隠した。

『やっと傷負ったか』

「うん。アレ、姉さん一人で出せる量じゃないよね。秀次と合流したのかな」

『だろうな。加古のトリガーはメイン・サブともわれてるぞ。国近、送れ』

『はーい』

「いつも通りか」

その瞬間、上からハウンドが襲った。それは瓦礫で防ぐ。

「……うわ。あっぶな、ハウンド。
私の居場所もわれたよ、慶さん」

『ああ。もう前に出るしかねーな。

前半の射撃戦で加古のトリオンは残り少ない。

三輪は上手くいなして、まず加古の動きを封じろ』

弧月を抜いて表に出ると、
真正面には、やはり秀次と姉さんがいた。









『二人とも、そうだ。撃ち続けろ。距離を保て。

虹が我慢できずに動く所を狙え』


右手に弧月、左手でシールドを張る虹をひらすら射撃する。
本当は虹にあまり時間をかけられない。
迅が駆けつけてしまえば俺ら三人はスコーピオンで両断されるだろう。


虹は運動能力が高く、重量のある弧月を持ちながらでもスピードが出る。
時間が惜しいのか、シールドを厚くして俺たちの方へ駆けてきた。

「三輪君!」

後ろから加古さんが俺に声をかけた。
俺の足止めで、加古さんには虹を射撃してもらう。

もう、距離は1メートルに満たない。
アステロイドを止める。次撃つのはレッドバレットだ。

虹は弧月を俺の首めがけて一振りした。
威力が強い。俺はそれを抑えて、一歩後ろへさがった。

拳銃を構える。
あんたの機動力さえ、奪えれば。


加古さんはアステロイドを撃ち続けている。

その時だ。突然虹がシールドを解いて左上に跳ねた。

「……っ!!」


拳銃ごと引っ張られる。
何が起こっているのか分からないまま、拳銃の引き金は引かれた。
銃口から飛び出したレッドバレットは三発、加古さんの上半身をとらえる。


「アステロイド!」

「くっ…!!」


このアステロイドは俺たちではない。虹だ。

「姉さんには、落ちてもらうよ」


虹はそう言ってワイヤーを弧月で切断し、俺たちから距離を取った。


【トリオン体 活動限界】

加古さんの換装が解ける。この時点で脱落だ。



「ごめんね、三輪君」


『はっは、敵ながらあっぱれだな。

秀次の拳銃をワイヤーで操り、加古にレッドバレットを命中させ、自分のアステロイドでとどめを刺す。

あっちが戦術も技術も一枚上手だった』

『アステロイドはここまで隠していたのか。
狡い手を使いやがって。太刀川の影響か』

「さあ、どうかしらね」

『虹の右は弧月、旋空、スパイダー。左はシールド、アステロイド。どちらかにバッグワームが入る。
それでも2つはまだ明かされていないが、トリオン量が多いから恐らくフリーにはしないだろう。

ここまで隠されると気になるな』










『虹!!良くやった!』

『虹さんすごーい!』

『アステロイドの命中率やばかったっす!』

『トリガー大改造してよかったな』

「そうだね、ありがと」

『次は三輪っすね』

「うん、」



私は秀次に向き直って弧月を構える。






その時だ。突然、上から拍手が聞こえた。









「いい勝負だったね、虹。

残すはあと二人か」




「迅……!」



「さあ、最後の戦いを始めようか」









「火を消すには火をもって為せ」(シェークスピア/「ロミオとジュリエット」)





29.4.1

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