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 sweet sweet sweet!2

家族に甘い人/イルミ



パドキア共和国にあるククルーマウンテン。
そこに暗殺業を家族で営む
ゾルディック家の屋敷は堂々と建っている。

いつもは静かな広いお屋敷の中をバタバタバタ!と走り回る足音が響いていた。執事やメイドはそれを止めようともせず、その足音が近づくと立ち止まって丁寧に頭を下げていく。


「うー!」


少女はそれも気にせずに
息を少しだけ切らせながら走る。

さらさらとなびく銀髪は落ち着き無く揺れていた。糸のように細く綺麗なそれは揺れるたびにきらきらと輝く。いつもは綺麗に梳かれ整えられているそれも、今は走ったせいで乱れてボサボサになっていた。

少女の兄が見たら怒るであろうが
そんなことは頭にないようで
バタバタと屋敷の中をさらに走る。

大きなエメラルドグリーンの瞳はキョロキョロとあちこちを彷徨っていて、探しているものが見つからないのか不服そうにむう、と小さく呟いた。


―ドンッ! 「わあ!」


勢いそのままに角を曲がると
その先に人が居たのか
思い切りぶつかって悲鳴をあげた。

よろけながらも鼻を抑える。


「痛い!鼻、鼻!」

「…もっと静かに走れと教えただろ」

「あ!見つけた!イル兄!」


鼻を勢いよくぶつけたようで、痛い!と主張しようと顔をあげたところで少女は笑顔になった。そのままぶつかった人である兄、イルミへと抱きつく。

どうやら少女の探し物はイルミだったようだ。年齢と身長差からイルミの身体の半分くらいしかない背で精一杯背伸びしてニコニコと嬉しそうにイルミの腰へと手を回す。


「もう、髪の毛ボサボサ」

「イル兄探したのよー。」

「うん。俺も探してた。」

「おぉ、一緒!えへへ」


早速ボサボサの少女の髪の毛をみてイルミは眉をひそめる。綺麗な銀髪を手で梳かしながら優しく少女の頭を撫でた。

されるがままになりながら年相応の笑顔でへにゃり、と嬉しそうに笑って少し舌っ足らずに喋る。

暗殺一家の長女だがまだ歳も幼い。
無表情なイルミとは対照的に
コロコロと表情が変わっていく。

少しそのまま撫でられていたが、はっ!と目を見開く。何かを思い出したのかイルミの腰に回していた手を外してその小さな手でぽかぽかと叩く。


「イル兄!キルアずるい!ゲーム!わたしも!」

「…ああ、あれはご褒美だから」

「ずるいー!わたしも、ゲーム!」

「キルはこの間仕事頑張ったからね。」

「なんでーわたしもがんばったよー?」


可愛く首を傾げながら
ねー?とイルミに同意を求める。

それを見て少しだけイルミの口元が緩んだようにも見えたが、すぐにいつも通りの無表情に戻ってしまい撫でていた手で少女の頭を軽く叩く。


「うぎゃー!」

「頑張ってない。」

「がんばった!」

「お前はこの間の仕事の時、勝手に居なくなっただろう?」

「ち、ちぎゃー!」


殴られた頭を大げさにさすりながら否定する。むむむーっと頬を膨らませてわかりやすくむくれてまたイルミをぽかぽかと叩く。


「ちがうよ!あのときは、変な人にこっちおいでーって言われてね!なんだろうなーって!」

「…知らない人に着いていかない」

「ひぎゃー!」


またもイルミに頭を叩かれて叫ぶ。

その手から逃げるようにイルミから少しだけ距離を置いて離れる。頭を叩かれないように手でガードしながら、イルミを睨む。


「知らなくない人だったもん…」

「誰?」

「えーっとね、たまにくる、お星さまのマークの人!」

「…ヒソカか」

「トランプで遊んだよー!こうね、そ〜…ほい!ぐらぐら〜ばさささー!って!」


たぶんトランプタワーの話をしているのだろうが、身振り手振りで効果音をつけて話す。よほど楽しかったのかそれでね!と続きを話し始めたのでイルミが遮る。


「あれはダメ」

「トランプ?ダメ?」

「ちがう。ヒソカの方。」


少し不機嫌そうにも見えるイルミは、少し距離の離れてしまった少女を引き寄せてそのままひょいっ、と軽々と抱き上げた。

最初は抵抗してジタバタと暴れていたが、諦めてイルミの首へと手を回した。頭を撫でられて、んーと嬉しそうに目を細める。


「見つけても無視。」

「むしー?」

「そう。話しかけちゃダメ。」

「だめー?」

「ダメ。話しかけられても答えちゃダメ。」

「だめー」

「うん。ダメ。」

「…んーイル兄が言うならそうする!」

「うん。いい子」


ふ、と小さく笑ってイルミは少女の頭を優しく撫でる。いつも無表情なイルミの笑顔は珍しかったが、少女相手だとこれはいつものことだったりする。ようするに妹に甘いのだ。

撫でられながらえへへ、と嬉しそうに笑う。


「あ!」

「ん?なに?」

「わたしいい子!ゲームは?」

「……ダメ。」

「にぎゃー!」




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