まくらがちがうと眠れない。
…なんて好きな人がいれば
そんなの関係ないみたい。
「クロロ…私、もう眠い」
「はは、まるで子供だな」
「……うるさい」
「すまんすまん」
「テレビも全然面白くない」
「本でも読むか?」
「…やだ」
クロロは本を読んでいて
その座るクロロの肩に寄りかかるように
私はソファーにだらーっと寝転んでいた。
テレビは適当につけたバラエティ番組で
わいわいと騒がしいが見る気にならなかった。
久しぶりにクロロとのんびり
ゆっくりとできる時間ができて
クロロの家でまったりしていた。
なんとなく帰るのがめんどくて
そのまま泊まることになって。
それからずっとクロロと
ぎゅーとしたりちゅーとかしたり、
今まで会っていなかった時間を
埋めるようにくっついていて。
でもやっぱり0時すぎると
私はだんだん眠くなってきて…。
クロロのうざったいぐらいのちゅーとか(別にいやじゃないけどね)、たまにエスカレートして服に侵入する手を叩いたりして(そういうのは今日はなし)、そろそろ眠くてめんどくさくなってきて(ホントにいやじゃないんだよ?ただ眠いだけ)。
ばふ、とふとんにもぐりこんだ。
「ふとんきもちー」
「最近寒いからな。羽毛のに変えたんだ」
「んー」
「寒くないか?毛布いるか?」
「んー」
「まくらは?」
「んー」
「……ゆめ」
「んー」
「聞いてないだろ。」
「んー」
だんだん沈んでいくカンカク。
クロロの声も少しずつ遠くなる。
あ、いつもとまくらが違う。
今日は急なお泊りだったから
用意してないんだっけ…。
やっぱりイワカンがあるから
寝たいのになかなか眠れない。
(いつもとちがうまくらじゃ眠れないんだよね。)
「まくらがちがうと眠れないんだっけ?」
「んー…」
細かいことだけど、
いつか言ったことを覚えててくれて
それがちょっと、なんか嬉しい。
「……そうだな」
「んー…っ?」
ぐいっ、とひっぱられたかと思ったら、ベッドに入ってきたクロロの胸あたりに引きよせられた。
私の頭の下にクロロの
胸…たぶん心臓がある。
耳をあてると、とくとく…と
心臓の鼓動の音が聞こえてきた。
「少しはいいか?」
「…ん。」
「そうか」
クロロの心臓の音をきいてると、すごく安心できてまぶたがどんどんとおちてくるのがわかる。(いつもだったらまくらがちがうだけで絶対に眠れないのに…。)
「おやすみ、ゆめ」
「…おやすみクロロ」
クロロはこれから
私の専用まくらだね。
決定。拒否権はありませーん。
そのうちクロロがいないと
眠れなくなるのかな…。
なんて考えながら私は意識を手放した。
(いつもとまくらはちがうけど、ぐっすり寝ていて)
(これ以上依存してどうするのーとか思いながら、でももう手遅れだよねって自分に言い聞かせた。)
(私ははどこでも寝れます。)
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