倉庫 | ナノ

 もっと甘い嘘がいい




「ねぇ、イルミ」

「なに」

「……やっぱなんでもない」

「なに」

「……気にしないで」

「なに」


ああ、やっぱり呼ばなければよかった。
がしりと強く掴まれた腕をみて後悔した。

瞳を見つめる。見つめられる。
黒くて、大きくて、澄んでいて、綺麗な瞳。
この瞳は苦手だった。

(嘘。綺麗で好き。)

見つめられると何も考えられなくなる。
何も考えたくなくなる。
イルミのことしか考えられなくなる。

(嘘。いつもイルミのことしか考えてない。)


「ずるいなあ」

「なにが?」

「イルミが」

「?よくわからない」

「ずっと分からなくいいよっ」

「やだ」


ぎゅ、とさらに強く握られる。
痛い。でもそれが心地よい。

ずっと捕まえてくれていればいいのに。
そしたら私はイルミから離れられないし
イルミも私から離れられないのに。


「ゆめ」

「なーに」

「いや、それは俺のセリフ」

「んー」

「どうしたの」

「イルミはなんで私と付き合ってるの?」

「ゆめが可愛かったから」


わー即答。恥ずかしい…!

適当にあしらわれてそれを茶化して
笑ってごまかそうと思っていたのに
私の作戦が粉々に砕けちった。

顔が真っ赤になる。熱い。
今なら外の雪も溶かせる気がする。


イルミの大きな瞳がざくざくと刺さる。
このままあの瞳に吸い込まれて
消えてしまいたいくらいに恥ずかしかった。



「イルミずるい」

「なんで」

「ずるい」

「ゆめ」

「ばかー」


そういいながらイルミの広くて
細いのにしっかりとした胸の中に飛び込む。
拒絶するわけでもなく、抱きしめられる。
手は氷のように冷たいのに、
身体はぽかぽかと暖かくて安心する。

ばかなのは私じゃないか。
簡単に落ち込んで簡単に喜んで。
イルミが好きで好きで好きで仕方ない。

そんなこと自分が一番わかってる。



「イルミー」

「なに」

「好きになってごめんね」

「はあ?」

「うー」

「ゆめ。どうしたの」

「そーいう気分なの」


イルミが私を側に置いてるのが
なんでなのかわからなくなって、
本当に好きでいてくれるのか不安になって
私は自分勝手でわがままで最低だー。

イルミが私の頭を撫でる。
優しい手。大きくて指が細くて綺麗で。
今イルミを占領している。優越感。
誰にも渡したくない。渡すもんかー
と思いながらさらにぎゅっと抱き着く。


「ふうん。好きにすれば?」

「うん。好きにするー勝手にするー」

「はいはい」

「ばかー」

「はいはい」

「………イルミ」

「はいはい」


私の突然のわがままにも
私の突然の不安にも
付き合ってくれる優しいイルミ

好き。大好き。

見上げるとどちらからと言わずキスする。


「ん、」

「…ゆめ」

「っう、ん…ふ」


舌が絡んで。熱い。好き。

吐息がかかる。熱い。好き。

目と目が合う。熱い。好き。

目を閉じる。熱い。好き。

イルミの体温。熱い。好き。

不安が熱で溶けてとろけて消えていく。


「大丈夫だよ」

「っあ、何…が、んう」

「(離す気なんかない)」

「っん、ん…イルミ」

「ずるいのはゆめだよ」

「ふ、…んん?」

「(俺をこんな気持ちにさせるんだから)」


無表情のイルミが笑った気がして
でもそれを確認する前に熱い舌が
私の思考を奪っていく。

そのままイルミに身体を預けて
思考も一緒に投げ出した。





(捕らえて離さない)(先に奪われたのはどっち)






(凛様へ!リクエスト/イルミ夢でした)
(あまり甘くならずにすみません…)

[back]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -