お母さんが守ってくれた命
わたしなんかの
面倒をみてくれてるヒソカさん
わたしなんかの
心配をして怒ってくれるイルミさん
まるで本当のおじいちゃんのように
優しくわたしを気にかけてくれるマスターさん
わたしの小さな、世界。
「ん…」
珍しく何事もなく、静かな朝。昨日のことが嘘のように目は痛くなくて、気分もよかった。お腹が空いているのを感じてなんだか嬉しくなった。
「(やっと普通に戻ったのかな…)」
きょろきょろと辺りを見渡すとヒソカさんはいなかった。イルミさんも居ない。一人だけの部屋はやけに静かでじわり、といやな汗が流れた。
「………っ」
パジャマがべとりと汗で張り付くのもお構いなしに隣の、イルミさんの部屋へと走る。
「イルミ、さん!」
「ゆあ…?」
ガチャッ!とノックもなしに部屋へと入るとソファーに座るイルミさんを見つけた。ほ、と安心する。
そのままイルミさんに抱きついた。
「!」
「よか…た。イルミさん、いた」
「…ゆあ?」
「一人は、いや、です」
「(なにこの生き物可愛い…)」
また一人になったかと思った。言い知れない不安が和らぐ。怖かった。昨日の夢のこともある最近は目が覚めるたびに不安になる。
わたしの世界は小さいから。
頼れる人なんていない。
一人になってしまったら…
そう考えただけでも怖い。
「あっ、わたし…ノックもなしにっ、すみません!」
「いいよ。ゆあだから許す。」
その代わりにもう少しこのまま。そう言われてイルミさんに抱きしめられる。ついでに優しく頭も撫でられた。
…あれ?イルミさんが、優しい。少し前はあんなにも怒って冷たいオーラがすごかったのに。許してくれたのかな?
お言葉に甘えてもう少しだけ
抱きつかせてもらうことにした。
…人の、温もり。落ち着く。
「ゆあ?◆」
「っあ、ヒソカさん…!」
部屋が凍るんじゃないかってほどの殺気。入口にはいつの間にかヒソカさん。この二人はいつも急に殺気を出すから困る。
いまの状況を思い出して恥ずかしくなる。慌ててイルミさんから離れた。イルミさんが舌打ちした気がするけどあれ?気のせいだよね、あれ?
「あの、あのヒソカさん!」
「ん?◆」
にこり、とすごい冷たい笑顔。…わーサクッっと殺されそう。さっきまでとは違う意味で冷や汗がだらだらと流れていく。
ヒソカさんの元に走り寄って
ぺこり、とお辞儀をした。
「ご心配を、おかけしました」
「…うん。かけられた◆」
「イルミさんも、ありがとうございました」
「うん。」
ようやく言えた。心の中でつっかえていた事。いろいろあって言えてなかったけどちゃんと言えてよかった。