※学パロ


「すまない苗字殿!!」
「……………、」


ツン、とそっぽを向き一向に某を見てくれない苗字殿。その白く細い指を綺麗な黒髪に通し、毛先を弄り目線は枝毛に釘付け。このいかにも何かありそうな10分近く続いたやり取りは、某の熱弁呆気なく枝毛に削がれてしまった。


「名前ちゃん、ごめんね。旦那今日試合前だからどうしても部活、出なきゃならないんだよ」


俺様からもお願い、と佐助も苗字殿に申し訳なさそうに頭を下げる。が、ちらりとこちらを見ただけで全く無反応。またもその視線は枝毛へと持っていかれた。この瞬間某+佐助<枝毛の式が成り立った。

某は何だかその事実に酷く悲しくなって思わず口から溜め息が零れてしまった。佐助が隣でぎょっとする。しまった、と思った時は既に遅く、今まで一向に反応がなかった苗字殿の眉間に深く皴を刻むこととなった。

そしてこちらを睨むように見上げる苗字殿。ドクリと心の臓が脈打つのがわかった。睨まれているのは分かっているのだが、先程までちらりともこちらを見てくれなかった苗字殿が某を見てくれたことが不謹慎にも嬉しくて、先程の悲しい気持ちがまるで嘘のように晴れやかな気持ちになって某の心に広がった。


「もっ、申し訳ない!」
「名前ちゃん、頼むよー」


佐助も反応を見せた苗字殿にすかさず頼み込む。先程まで某を訝しげに見ていたのに、全く。洞察力に関しては驚く程抜かりない奴である。某は佐助を横目に見てからもう一度苗字殿を見た。その表情は相変わらず不機嫌だがふと唇が開いた。


「ねえ、真田君。溜め息つきたいのはこっち、そこ分かってる?」
「うっ、わっ分かっております!故にこうして謝罪を…」
「あー…なんかもう面倒くさ。もう大分時間経つし、さっさと部活にでも何処でも行けば?」


「さっさと部活にでも何処でも行けば?」という苗字殿の声に勢いよく顔をあげる。そこには心底面倒臭そうな表情の彼女がいて、某は思わず目をしばたかせた。


「え?」
「ねえ、猿飛この子日本語通じてる?大丈夫?」
「うん、多分大丈夫…かな。ていうか、え?」
「何?お前も日本語通じないの?」


訝しげにこちらを見て眉を寄せた苗字殿に佐助は困ったように眉を八の字にして某と苗字殿を交互に見て一言。


あれだけ渋った癖に
そりゃないぜ


「ああ何?つまりは時間の無駄だったと言いたい訳ね。頼み事してる分際で」




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