※所謂インモラルでグロテスク
苦手な方はかなり気分が悪くなります。観覧は自己責任ですが痛いのとか嫌な人は観覧を勧めません。観覧後の苦情なんかは受け付けません。以上を踏まえた上大丈夫なお嬢さまのみどうぞ!




「い…や、いやだぁっ!!」


いやだ、ごめんなさい。さっきからそればっかりしか言わなくなってしまった名前。地球人って言うのは脆くて弱い。すぐに壊れてしまうんだと彼女を見ていて思った。

名前は僕のだいすきな円堂くんの幼馴染。マネージャーではないらしいけれど仕事を手伝ってみたり、確かな立場は彼女にはなかったけれどいつも彼らを応援していた。それだけで彼女は何の役に立っている訳でもないのに、彼ら雷門イレブンに受け入れられ、居場所を作っていた。

立場がないのに居場所がある。そんな彼女に嫉妬と興味の半分ずつ。ああでも円堂くんに無条件に大切にされている辺り、赦せなかったのかも。にこにこ笑っているだけで愛され必要とされる彼女を疎ましいとさえ思った。

だから俺は彼女に接触した。何がそんなに彼らを引き付けるのか。何が円堂くんをあそこまでさせるのか。気になって気になって仕方がなかった。あ、そう考えると興味の方も凄く大きかったのかもしれない。

優しい基山ヒロトとして接触した俺にすっかり気を許していた名前を、俺は何となしに連れ去ってしまった。まあ、所謂拉致。彼らが騒ぎ出すのは時間の問題だろうけど、連れ去った瞬間を見られるようなヘマはしていない。俺は調度いいと思い名前を暫くは返さないことにした。


「ヒロト…く、何…して」


初めは基山ヒロトではなくグランである俺を見て、驚いた顔をした名前だった。信じられないとでも言うように顔色を白くさせ、目を見開いた。でも暫くして悲しそうにそれでも悟ったように目を伏せた後、名前は今まで見たことのない凛とした顔つきになった。

無表情ではないけれど、怒っている訳でも、悲しんでいる訳でも、いつもあった笑顔がある訳でもない。本当に、ただ凛とした真っ直ぐな顔だった。真っ直ぐにこちらを見詰める瞳には何の感情も篭っていないように見える。だがその奥には確かに、それがなんなのかは分からないけれど静かに何かが秘められていた。

こんな名前の顔を見たのはきっと俺だけだ。それは直感だった。いつもにこやかに、ほわほわと笑う彼女のこんな表情。それを見た途端俺は妙な優越感に浸った。名前のこんな表情を見たのは俺だけ。もっと彼女の誰も見たことのない表情を見たい。この真っ直ぐな彼女の表情を歪ませてみたい。いろいろな感情が俺の中で交差する。

気が付けば俺は鋸のような、鋭い刃物を手に持っていた。彼女の瞳が表情が一転、恐怖に染まっていく。口許からはがちがちと音が鳴り、目は完全に見開かれている。そんな彼女の姿にまた気分が良くなる。

一歩、また一歩と名前に近付き歩み寄れば彼女は恐怖し後ろへと後退りしていく。何だかそれが楽しくなって来た俺は、ゆっくりけれど確実にじりじりと恐怖心を煽るように彼女を追い詰めていく。にじり寄っていけばとすりと彼女の背中が壁にぶつかった。思わず口許が釣り上がる。

名前は絶望したような表情を見せると懇願するように俺を見た。ああ、ぞくぞくと背徳感が背筋をかける。ヒロトくん、そう呟いた彼女に俺は笑ってこう言った。


「基山ヒロトじゃない。僕はグラン、ジェネシスのグランだ」
「ぐ、ら…違う、ちがうわ!あなたは優しい…っ、サッカーの上手な…私のっ」


わたしのすきなヒロトくん。その彼女の一言に俺の中で何かが弾けた。俺はグラン、基山ヒロトではない。だが基山ヒロトが好きだと言った彼女の言葉に素直に喜ぶ自分もいる。ああ、俺は嬉しいんだ。そこで気付く、俺は彼女が好きなのか。

だが同時にジェネシスであるグランを否定された気がして、俺は頭に血が上った。グランを否定することは、俺の存在意義を。俺の今までの血の滲むような努力を否定する。それがひどく気に入らなかった。彼女だから、名前だからこそ尚更。俺は受け入れてほしかったのかもしれない。


「物覚えの悪い娘は嫌いだよ」
「あっ…ひっ…や、やだやだやめっ…」


やめてよひろとくん。白い、健康的な肌に食い込む鋭利な刃物。それが触れた所からどんどんぷっつりと赤い玉が出てくる。ああ、綺麗だなあ名前の血は。地球人も僕らと同じで血は赤いんだ。そんなことを思いながら彼女の制止の声を無視し、俺は腕に力を篭めた。無情にも彼女の体を侵食していく刃物に名前は声にならない声で悲鳴を上げた。

ぐちゅり、ぼきり、がこん。いろいろと生々しい音が室内に響く。途中骨に当たったのか、中々上手く切れない所もあったが刃を上下に動かしてみれば難無く通過できた。その間名前の痛みから開いた口からはまるで事情時の喘ぎにも似た悲鳴が断続的に上がり、だらしなく唾液が口端からこぼれ落ちる。痛みと恐怖で瞳孔が開き切った瞳からは静かに涙が溢れ出していた。

ぼとりと落ちたのは先程まで付いていた名前の右腕。どくりどくりと血が出て来て、すぐに血溜まりを作っていく。不意に目に止まった名前の切断部分とその表情に思わずごくりと生唾を呑む。

今まで味わったことのないような何とも言い難い高揚感。ぞくぞくとしたこの感じに俺は思わず笑った。ああ、自分で言うのはあれだけど俺は相当いい趣味をしてるらしい。俺は不完全な、と言っても俺が完全品を自ら崩したのだが。パーツの欠落した何とも不憫な彼女の体に欲情してしまっているのだ。


「か…はっ…ああ゙ぁっ、痛っいたい…」


放心状態の名前の傷口をぐりゅ、と舌でえぐれば一層悲鳴が上がる。口の中に生暖かい鉄の味が広がり、一瞬だけ吐き気を覚える。だがすぐに善くなってしまう。ああ、愛しい。なんて愛おしいんだろう。自分がしていることが非道徳的だと分かっていても、やめられなかった。

いたい、当たり前だろ。痛くしてるんだ。やめて、どうして?こんなに楽しくて気持ちがいいのに。ゆるして、それは何に対してだい。ごめんなさい、名前は悪くないよ。悪いのは寧ろ僕のほうさ。じゃあ、お願い…。なんだい?


「…わ、たしを、かえ…して」


俺は口許に弧を緩く描いた。そして彼女の耳元に赤く濡れた口許を近付け、こう囁いた。


「それはだーめ、一生帰さないさ」


アクロトモフィリア
欠損部位と君にありったけの情を




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