あのミコが、押されている。ジャックとラフは呆然と、その様子を見ていた。
二人の目の前には何やら激怒している女性と、何も言い返せず黙り込むミコ。高い位置からはオートボットたちがハラハラと(何体かはしれっとした様子で)それを見下ろしていた。

「分かってるの、あなたがどれだけ危険なことをしたか、どれだけ邪魔をしたか!」
「…だからゴメンって、言ってんじゃん」
「お、おいナマエ、そこまで怒鳴らなくても」
「これが当然よ、もっと言ってやってナマエ」

フォローに回ろうとするバルクヘッドを、アーシーが冷たく突き放す。オプティマスやラチェットは何度も顔を見合わせ、バンブルビーはなぜか縮こまっている(あの女性を怖がっているのだと、ラフは確信した)。
ファウラーを救出して基地へと戻ったとき、無人であるはずのそこには一人の人間がいた。ラチェットがげ、と声を漏らしたのをジャックは聞き逃さず、誰なんだと聞いた。するとオプティマスが肩膝をつき、彼女へ顔を近付ける。

「ナマエ、来ていたのか」
「挨拶はいいわ。説明してもらおうかしら」

にっこりと、しかし絶対零度の表情で、彼女…ナマエは全員を見渡した。その視線は明らかに子供たち三人に向いていたが、バンブルビーがさりげなく自らの足で隠したため彼らがそれに気付くことはなかった。

「…彼女、何なの?」
「あー…オプティマスの、恋人だ」
「はあ!?」

ジャックがこっそりと、声を潜めてラチェットに問う。しかし予想外の返答に声を上げてしまい視線を集めてしまった、が、すぐに散った。一度止まった怒声が再び響きだす。
「人間だよね?」「ああ、見ての通りだ」「何で」「お互い一目ぼれだそうだ」「…ワオ」笑えない、ジャックは肩をすくめる。自分がアーシーと付き合うようなものだ、とても想像がつかない。
しかし、その事実により、ジャックはようやく彼女が激怒する理由を推測できた。司令官の恋人なら、仲間を危険に晒したミコに怒るのは当然だ。先程まではミコが哀れに思えたが…これは自業自得だ。ジャックはミコに視線を向けた。
ミコはぶすっとした表情で俯いている。その態度にだんだん、だんだんナマエがヒートアップしていく。

「いい、あなたがディセプティコンに殺されようが知ったことじゃないわ!だけどあなたのせいで誰かが命を落としてみなさい、私があなたを」
「ナマエ!」

ジャックが目を見開いた、瞬間オプティマスが大きな声で彼女を呼んだ。ぴたりと怒声が止まる。顔を上げたナマエを、オプティマスが優しく手のひらで掬い取った。「少し話をしてくる」そう言って奥へと消える二人。大きな背中が見えなくなった途端、何人もが大きく息を吐いた。

「…悪いな、仲間思いなだけなんだ」

バルクヘッドが気まずそうに呟く。ミコは未だ黙ったまま、ジャックとラフは呆然としている。
淀んだ空気はなかなか澄みそうになかった。








夢?
20120430 やりきれないわ
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