「時間を持て余すか」

酷く愉快そうな声色で、低く言う。自らの足元に座り込む小さな体を、メガトロンはその赤く光る目で見下ろした。
ラヴィッジが咥えて戻ってきたその"虫ケラ"を、殺さず生かしたのは、その時は気まぐれだった。然し今はどうだろうか。そのふたつの目玉に自分しか映さない生き物を、彼は気に入っているらしい。
どこかの司令官が人間と話すときにそうするように、片膝をついて顔を近付けた。

「別に、メガトロンが来てくれたからいい」

彼女…ナマエは、ゆっくりと立ち上がって、メガトロンの眼前に立つ。人間で言う頬あたりを右手を伸ばして撫で、それから嬉しそうに目を細めた。彼が会いに来ると彼女が必ず見せるこの表情を、彼は至極好んでいた。
金属生命体の彼等にもサイズが合うようにと作られたこの部屋は、人間には広すぎる。加えて殺風景なものだから、日々を過ごすには毛ほども向いていない場所だった。それでも彼女は文句ひとつ言わずに留まった。冷やかしがきても、正義感の強い者が哀れみの目を向けても、彼女は逃げだそうとはしなかった。
そんな彼女の本心は読み取れないが、自分の側を離れようとしないその様子に、彼は満足していた。

「ナマエ」

我等が主は一体どうしてしまったのか。
気が触れてしまったのではないか。
人間の女を寵愛する大帝を見る部下達の密かな囁きが、彼に届いていない訳ではない。それによって高いプライドが傷付かない訳でもないが、どうにも。彼女を前にすると、彼のブレインサーキットは何時も通り働かないのだ。

「ナマエ」

何度も名前を呼ぶ彼を、彼女は首を傾げて見つめた。何とも愛くるしい。
この先何があっても、彼女だけは壊したくない。守ってやりたいなどと柄にもないことを思い浮かべながら彼は大きな指先で彼女の頭を撫でた。











20120107 愛情とその可能性について
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