「行くべきよ」 「止めておけ、死ぬぞ」
そう言うと彼女はじとりとおれを睨んだ。それを横目で見遣った後おれは何日か前の新聞に目を通す。ポートガス・D・エースの処刑について延々と書かれたそれは、彼女が憤りのままに破り捨ててしまう為もう何度も買い直したものだ。 電伝虫が映し出す小さなスクリーンには、マリンフォードで繰り広げられる戦争の様子が描かれている。その渦中にいる黄色のベストの男が、彼女は気掛かりで仕方ないらしい。
「知ってたけど、あなたって薄情だわ」 「昔一度助けた」 「あのときは、…あの子ならスモーカーくらい退けられた筈よ」
ふん、と自慢げに鼻を鳴らす彼女は親馬鹿だ。しかしスクリーンの中で攻撃が激化するとすぐに青ざめて食い入るように見つめる。そしてまた何か言いたげにこちらを見た。 ちらと視線を合わす。
「おれは奴を自由に生かすと決めた。この戦争で死ぬとしても、それも奴が自由にやった結果だ。それに」 「に?」 「こんなところで死ぬ男じゃない」
そう言うと目を真ん丸く見開き、その後脱力したようにデスクにだらりと伏せた。あーだのうーだの意味の無い音を発してから、スクリーンを消した。
「いいのか」 「…何か、愛の差をまざまざ見せ付けられた気分」 「?何を言っている」 「私もそれくらい信用しなくちゃね、もう大きいんだし!第一そんなヤワな体に産んでないわ!」
そうよそうよ。自身に言い聞かせるように呟く彼女の顔は先程とうってかわって綻んでいる。コロコロ表情が変わるところは、奴とよく似ている。否、奴"が"よく似ているのだろう。彼女釣られて口元を緩ませながら、おれは新聞を閉じた。
海賊:ドラゴン スクリーンとか^^ 20120816
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