女みたいに白くて綺麗で、でも大きくて節くれだった指が私の頬をつうと撫でる。
「ばれやしないさ」
紅を引いた唇が楽しそうに歪んでそう紡ぐ。腰が抜けて床にへたりこむ私を、壁際に追い詰めて彼は目を細めた。 目を合わせるには羞恥心が強すぎて視線をさ迷わせる。そうして彼のはだけられた胸元に目がいって、見慣れている筈のそこから放出される底無しの色気に無意識にごくりと喉が鳴る。それに気付いて彼は声を出して笑った。
「お前さんも、楽しめば良いのさ。叱る権利なんて誰にもありゃあしない」
背中に当たる木の板越し、ナースの可愛らしい声とあの人の荒い息遣いが聞こえる。自慢のリーゼントは今きっと乱れているんだろう。 向こう側の声が届くということは、こちら側の声も筒抜けということだ。小声で囁く彼の声は聞こえなくとも、もし、今から始まるのなら、そのすべてはあの人の耳に入る。 こわい。俯く私の顎を、彼が優しく掴む。くいと上を向かされた。
「堕ちておいで、おれのところまで」
やさしく、やさしく彼が言う。逆らえやしない。私が小さく息を漏らしたのを合図に、彼は私の唇に噛み付いた。
海賊:イゾウ
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