わたしはいまなきそうなかおをしているのかもしれない。なぜならかれがこまったかおをしてわたしをみつめているからだ。かれがこまったかおをするのは、わたしがないたときだけだ。

「そんな顔を、しないでくれ」

おおきなおおきなかれが、しずかにひざをおってわたしのめのまえにかおをよせる。これもおおきなおおきなゆびが、わたしのほっぺをなでる。

「…抱きしめることすら、叶わないな」

なでられたゆびにぎゅう、とだきつくと、かれがぽつりとつぶやいた。ひとにそんなかおするな、といっておきながらかれもなきだしそうだ。
おもいがつうじあっているのに、しあわせなはずなのに、こんなにかなしいのは、やっぱりかれとわたしのあいだにそびえるけっしてこわれないかべのせいだろう。けっしてかれとそいとげることは、できないのだ。こらえきれなくなってほろりとめからみずをおとすと、かれはめをとじてほっぺをすりよせてきた。
ほろほろ、なみだはとまらない。





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