君の心は今日も、あの子をずっと見詰めたまま。
「勝家、帰ろうよ」
「……ああ」
気の無い返事、視線は私の後ろを歩いていく一組のカップルに向いていて。
どこかぎこちなくも、初々しくて幸せそうなお似合いの二人。ずっと想ってきたあの子が違う男の隣を歩いて帰っていくその後ろ姿をただただ見詰めるだけの君。見るのはこれで何度目だろう。
(市ちゃんが付き合えば、諦めると思ってたのに)
そしたら、少しは私を見てくれると、そう思っていた時期もあった。
しかし彼の想いはそう簡単には消えないらしく、彼女を見詰める視線に悲しみと虚しさが混ざっただけ。
何も変わらない。彼の想いも私の想いも。
「ねぇ勝家」
「……何だ?沙紀」
好きだよ、
本当に言いたい言葉は呑み込んで。
「…早く帰ろう。門限過ぎちゃうよ」
「…そうだな」
今日も、きっと明日もその先も、
叶わぬ想いを抱えたまま、君の隣を歩いていくのだろう。
ロストメモリー
(私の感情も君の感情も)
(いっその事無かったことになってしまえばいいのに)
初勝家君夢がコレって。
しかも勝家君ロクに喋ってないという。
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