ビュゴォォォォォ
ザアアアアア…
「うわー、凄い雨。大丈夫かな三成」
昼間からしとしと降り続いていた雨は、夕方頃から強くなりはじめ、やがて強風と雷を伴う嵐までに発展した。
窓に叩き付けるかの様な雨に、これから帰ってくるであろう同居人の身が心配になってくる。確か今日は、「どうせすぐやむだろう」とか言って、傘を持っていっていなかったはずだ。
迎えに行った方がいいのだろうけど、前傘を忘れていった時、迎えに行ったら風邪引くだろうって怒られたんだよな。
「一応メールしとこっと…」
『凄い雨だよ?傘持ってってなかったけど、大丈夫?(・・;)』
「そうしーん」
パタンと携帯を閉じて、返事を待つ。どうせまだ仕事してるだろうから、コーヒーでも淹れて待って
テレレッテレレッテレレッテッテッ
「はやっ」
『もんたいない(;´д`)貴様は大人し家で待つていろ(^q^)また向かえに着たりしたらどうなるかわかつているだろなd=(^o^)=b』
「しかもまた使いこなせてないし…くくっ」
この現代においてここまで携帯を使いこなせてない男はきっとこいつくらいなんだろうな。私の真似して顔文字も使いはじめたけど絶対意味わかってないし。
テレレッテレレッテレレッテッテッ
「あれ、またメール」
『必ず家で待つていろ(--;)』
「二回目じゃん」
何をそんなに念を押しているのやら。どうせこの雨だし三成も迎えに来るなって言ってるし、大人しく家で待ってますよ。
っていうか、ホントどうやって帰ってくるつもりなんだろ。
そうして、言われた通り大人しく待つこと一時間(正確にはWiiフ〇〇トやってたから大人しくはなかったのだが)。
もうそろそろ帰ってくる頃かな、そう思い始めたとき、ドアがガンガンと叩かれ思わず飛び上がった。
恐る恐る覗き穴から見てみればそこには見間違うはずもない銀髪。傘だけじゃなく鍵も置いてきたのかとちょっと呆れて戸をあければ。
ずぶ濡れた同居人が何を言うでもなくただ私を見下ろしていた。
「………」
「………おかえり。風邪引くよ」
「なっ!?何故何の反応も示さない!?」
「何の話だよ」
「刑部が言っていたのだ、女は水滴を滴らせた男に心動かすものだと!!」
「刑部さんの言うこと一々鵜呑みにするんじゃないよ。あとアンタは滴りすぎな。ほら、拭いて」
わしゃわしゃと髪をタオルケットで拭いてやれば、不満げな顔をする三成。
濡れた手に腕を掴まれたと思った次の瞬間、私は彼の濡れた身体に抱き締められていた。
「ぎゃあっ!つめたっ!さむっ!」
「やかましい…何故貴様はこうも私の思う通りに動かない」
「は?………んっ!?」
荒々しいキス。冷たくなった彼の唇が私のそれに重なり息をする間も無いほどに貪られる。
苦しくなって胸を叩けばそっと離れる。
「……愛している」
「な、何突然…」
「私と結婚しろ、拒否は認めない」
差し出されたのは、小さな箱。
嬉しさに思わず震えた声で返事をしようとすれば、
「クシュンッ」
「………」
ムードを壊すクシャミの音が聞こえた。それでも私の答えは変わらない。
ケータイは使いこなせないし、人の言うこと一々鵜呑みにするし、滴るどころかずぶ濡れな彼だけど、そんなちょっとダメなところ全部纏めても魅力的に見えるのは、惚れた弱味というやつでしょうか。
水も滴りすぎるいい男
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