迷子の武将達 29/63
ピッピッピッ
プルルルル…ガチャ
「もしもーし」
『おう佐和か、どうしたんじゃ?』
「後で○×ショッピングモール梅坂に土下座しといて」
『何故!?』
「地べたに頭擦り付けてね。誠心誠意こもったやつお願い」
『ちょっ、何しでかしたんじゃおぬs』ブツッ
「…なんか、申し訳無いねぇ…お祖父さん何もしてないのに」
「誰のせいだと思ってんの?」
「「「「「ごめんなさい」」」」」
あの後、私達はショッピングモールを出て近所のスーパーに向かっていた。
またハイエナ軍団に会うの嫌だったし、どうせ後は食料品ぐらいだったから別にスーパーでも問題ない、ってことで。
「それに、あそこの方が野菜の品質がいいんだよね」
「………そうなのか?」
食いついて来たのは意外や意外、小十郎さん。
「おっ小十郎さん、野菜に興味がおありで?」
「あ、ああ。………元の時代にいた頃は、野菜を作ったりしていたからな」
………意外過ぎる。農民ルックで畑を耕す小十郎さんとか絶対ミスマッチ………
「………(想像中)」
………あれ、意外と似合う…?
「小十郎のvegetablesはマジで美味いんだぜ?他の国から態々出向く奴がいたぐらいだ」
「そうそう。まつねーちゃんも加賀から奥州まで行っちゃったし」
「へぇー…凄いんですね小十郎さん!」
「………………言われる程じゃねぇ」
小十郎さんは、そう言ってふいっとそっぽを向く。
照れてるのかな………なんか可愛いな。成人男性(しかもちょっとヤーさん系)に使う言葉じゃないけど。
「はい着いたよ、ここがスーパーマーケット、略してスーパーでーす」
○×ショッピングモール梅坂から徒歩10分、着いたのは●○スーパー桃園支店だ。
入口に置いてあるカートをカラカラと引きながら、小十郎さんと野菜談義をする
「来る途中にも言ったけど、ここの野菜は新鮮で美味しいの。無農薬で安全だし」
「無農薬?」
「野菜が虫に食べられないように、薬撒くところもあるんだ。けど、それだと安全面が心配なんだよね〜」
「ふむ…俺も野菜に薬を撒くのはどうかと思うな。野菜は自然のままに育てるべきだ。むやみに人の手を加えるべきじゃねぇ」
「やっぱ小十郎さん分かってるー!」
見た目とか味以前にまず安全性!意外と考え合うなー小十郎さん!
「……どうしよう。俺あの二人が何話てんのかさっぱり分かんないよ」
「それがnormalだ、風来坊」
「小十郎さん、葱はどれがいいと思う?」
小十郎さんは葱を一本一本真剣な目で見定める。そして、その中から4本選んで私に渡した。
「なぁ佐和」
「はい?」
葱を篭に入れながら受け答える。
小十郎さんは、ある野菜をまじまじと見詰めていた。その野菜は、夏が旬の野菜、トマト。
「あー、戦国時代にトマトは無いもんね」
「とまと…これの名前か?」
小十郎さんは一番色鮮やかなトマトをとる。893っぽい顔なのにトマト持ってる姿に違和感がないとはこれ如何に。
「トマトは夏の定番野菜!甘酸っぱくて美味しいから、私好きなんだよねー。まぁ子供には苦手な子が多いらしいけど」
「ほう…」
どうやらトマトにすっかり心奪われたらしく、葱と同じようにトマトを選別して篭に入れた。
「家帰ったら食べてみる?」
「ああ」
「勿論政宗逹もだからね…ってあれ?」
振り向けば、既にそこに政宗逹の姿はなかった。
「………ハア、どうして誰一人いなくなってるのさ…オカンすらいないし」
「全く…またさっきの女共のような奴等に会ったらどうするんだ」
「まぁここに来るのはお母さん方とか一人暮らしの人くらいだから、そこは問題ないよ」
「ならこのまま店内を回り、見つけ次第捕まえて説教。それでいいな?」
「OK。私も手伝うよ」
こうして、捕獲作戦が開始された。
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