風魔の子孫 13/63
「…フン、阿呆が」ボソッ
「ああ゙!?んだとてめえ!」
毛利さんの呟きにキレた長曾我部さんが毛利さんにクッションを投げつける。
それにぶちギレた毛利さんがTVのリモコンで長曽我部さんの鳩尾を攻撃し、そこからケンカに発展した。
TVの時といい、この二人は相当仲が悪いようだ。
しかしクッションだのぬいぐるみだの柔らかいもので攻撃する長曽我部さんに対し、毛利さんはリモコンや箒の柄で容赦なく長曽我部さんの右目と鳩尾を集中攻撃しているのだ。長曽我部さんが可哀想に見えてくる。
「って実況してる場合か私!家荒れる前にさっさと収めないと!」
「…あの、深影殿、某は…?」
「ああ、別にいいですよもう!それよりあの二人止めるの手伝ってください夕飯抜きにしますよ!」
「承知致した深影殿ぉぉぉぉ!」
「…あれ?もうチャラになったのてれび破壊した件…」
真田さん達と協力して止めようとするも、デッドヒートした二人の争いは止まらない。
正確には毛利さんが止まらない。
毛利さんを押さえようとすればリモコンで頭をしこたま叩かれ、時に箒の柄で向こう脛を叩いてくるんだ。
せめて長曽我部さんだけでもと思い長曽我部さんを抑えても、その隙にとばかりに毛利さんが長曽我部さんの目をリモコンで突いてくるのでひたすら長曽我部さんが哀れなことになる。
さらに空気を読めないらしい前田さんがカーテン止めるやつを振り回しながらケンカに乱入してきて、まさに三重苦。
もう誰でもいいからこの人達を止めてくれないかなと思っていたその時。
ピ―ンポーン
とインターホンが鳴った。
『……』
戦国時代から来ているためインターホンの音は彼らにとって未知の物だったのだろう。
みんなが茫然として動かなくなったその隙に、毛利さんからリモコンと箒を取り上げた。
「貴様何をする!」
「何をするじゃないでしょう散々ケンカしやがって武将このやろう」
「佐和ちゃん口調!ところでさっきの音何!?敵襲!?」
「いや、あれは人が来ましたよーってお知らせする音だよ」
ピンポーンピンポンピンポピンピピピピピンポーン
………瞬太郎ったらせっかちなんだから。
「ちょっと待っててくださいね―」
呆気にとられる佐助達を残し、私は玄関へ向かった。
「……」
「……や、ホントゴメン瞬ちゃん」
玄関前には、左手に食糧、右手に衣服の入った袋を持ちTVを背負った赤髪の青年(瞬太郎)がいました。
これ持ってるのにこの速さ…瞬ちゃんパネェ。
…というか一体どうやってインターフォン鳴らしていたのかが気になるところ。
「…食糧と衣服は、どこにしまえばよろしいでしょうか…?」
「あ、そこにおいといてくれればいいよ」
「…TVの配線は、どういたしますか…?」
「あ、そっか、配線つながないと見れないよねー。やってくれる?瞬ちゃん」
「…」コク
瞬太郎はうなずくと、TV背負ったまま家の中に入って行った。……と思うと、3分ぐらいですぐに帰ってしまった。
もうちょっとゆっくりしてけばよかったのに…。
リビングに戻ると、新しいTVはきちんと元の場所に置かれていて、配線もしっかりつないであった。
しかも壊れたTVも持っていってくれたらしい。瞬ちゃんマジハンパない。
「…なあ佐和ちゃん、さっきの真っ赤な髪の奴は誰なんだい?」
前田さんが瞬ちゃんの事を尋ねてきた。まあ、いきなり現れていきなり帰ってったんだし、気にならないわけないか。
「彼は風魔瞬太郎、私の家の使用人の一人ですよ。それが何か?」
「風魔…!?」
何故かはわからないけど風魔という名字に、前田さんは驚いた顔をした。
…いや、前田さんだけではない。佐助も片倉さんも、私と前田さんの会話を聞いていた人はみんな、驚いた顔をしていた。
「ちょっ…風魔ってホント!?佐和ちゃん!」
「そ、そうだよ。…そういえば、瞬太郎、忍者の子孫だってパピーから聞いたことある。たしか風魔小太郎っていう人だったと思うけど」
「ええええええええええ!?」
ホントどうしたんだ一体…。あ、そういえばみんな400年前の人だったな。
じゃあその小太郎って人と知り合いなの?と佐助に聞いてみた。
「知り合いっていうか…俺様達の時代じゃかなり有名だよ、風魔小太郎って」
佐助曰く、瞬太郎の先祖の風魔小太郎さんは、伝説の忍と呼ばれていたほど凄腕の忍何だそうだ。
…その伝説級の人の子孫をパシらせてる私って一体何なのか…。
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