愛してると叫んだ



主人が綺麗だと誉めてくれた自慢の翼を広げ真っ青な空に飛び立つ。風を切るように羽ばたき上昇し小さくなった町を見下ろした。とある森の奥にある小さな町。私と主人が生まれ育った場所でもある。
最初私は体が弱く病気がちな主人の遊び相手にとポッポだった頃に主人の父親に捕獲された。群れの中でも体が小さく少し仲間のポッポ達から離れていたのが悪かったのかあっさり捕まってしまったのだ。私を捕まえた主人の父親は、モンスターボール越しに主人について教えてくれた。捕まえられたことにショックを受けていた俺はその時のことをあまり覚えていないのだが、今思い返せば、主人の父親は主人の死期をわかっていたのかもしれない。だからせめてポケモンが大好きな主人を想って俺を捕獲したのだろうか。それが人間のエゴイズムだとわかっていても。
ベッドと本棚のみというシンプル過ぎるような部屋に主人はいた。俺を見るなり主人は綺麗に笑って私を抱き締めた。その腕の中は思った以上に温かくて優しくて、私は主人の隣にならいてもいいかと思った。
思えば運命だったのかもしれない。
私と主人は、出会うべくして出会ったのだ。
「いつか俺が元気になって、旅に出れた時、お前は立派なピジョットになっているだろうか。その時、お前の背に乗せてくれないか。きっと部屋で眺める空なんかよりも綺麗だろうなぁ」
そう言って太陽にも負けないくらい明るく笑った主人の顔が脳裏に焼き付いて離れない。
主人が死んでしまってから、もうどれくらい月日が流れただろうか。ポッポだった私がピジョットにまで進化したのだから相当な月日が流れたのだろう。
だが、私の時間はあの時から止まったままだ。主人の笑顔が消えたあの日から止まったままなのだ。
出来るのならもう一度、あの日に戻りたい。そうして彼を乗せこの世界から消えられたら、俺は主人とずっと永遠に幸せになれたのだろう。
いまそう願っても、そんな奇跡は起こらないけれど、私はそう願わずにはいられなかった。
雲を裂き太陽に近づくくらいに空を掛け上がると思った以上に風が強くて一瞬目を閉じた。…涙が出たのは、きっとそのせいだ。
暫く空の散歩を満喫し地上に戻る一瞬、雲の隙間から射し込む陽の光の中で綺麗に笑う主人の姿を見た気がした。大好きだったあの笑顔を浮かべて手を振っていた。

『大好きだよ、ピジョット!』





2011.3.21
ピジョット好きですもふもふしたい!

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -