君に伝えたい!



「光っ!また小さなったん!?」

「アホか!小さなる訳ないやろ。お前がデカくなってんねん!」

ごつりと持っていたラケットで遠山の頭を軽く叩く。鈍い音したけどまぁ平気やろ、多分。遠山は俺を見下ろすとにかりと笑って俺の頭を撫でた。一年前までは、それは俺がする側やったのに三年の先輩らが卒業し、二年になった遠山は周りが驚くくらいに成長した。…外側のみやけど。中身は全っ然変わってへんで。
ふとまだ俺を見上げていた頃の遠山を思い出して寂しくなった。やって、俺らは変わってしまったから。

「なぁ、ワイ光のこと好きやで!」

遠山が俺の身長を追い抜かした頃から言い出した言葉。
最初はふざけているだけやと思ってたんやけど、何度も何度も繰り返されてそない真剣な目ぇされたら嫌でもわかる。

「…ふぅん」

でも、今そんなん言われても、何て返せばええかわからへん。遠山を好きかて聞かれたら答えは違うし、言われて嫌かて聞かれても、きっと違うて答える。
ちらりと遠山を見上げると不満そうな顔してた。その顔に思わず吹き出すと小突かれてもた。年下なんに生意気やで!

「信じてやぁ!」

「はいはい、遠山が真面目に部活するんやったら考えたるわ」

「ホンマやな!?」

俺の言葉に遠山の表情が一気に明るくなる。練習や言うて自分のコートに走って行く姿に小さく笑みを溢してラケットを握り直した。
“真面目に部活するんやったら考えたるわ”やなんて。そんなんせんでももう十分に考えてる。まだ恋愛と友情のどちらの好きかは分からないが、きっといつか答えなければいけない時が来る。




『お前が“四天宝寺の天才ざいぜんひかる”なん?』
『なんやガキ。喧嘩売っとんのか』
『ワイ、遠山金太郎言うねん!よろしゅうっ!』
『…、』
『なぁなぁっ白石が言うとったで!光はテニス強いんやろ?今からワイとテニスしよやっ!!』




初めて会ったときはこんな五月蝿いガキと仲良くなんかなるもんかって思ってた。それなのに、今はこれや。人生何があるか分からんもんやなぁ、なんて思ってみたりして。
遠山が試合をしてるコートに目を向けると丁度こちらを見たのか遠山と目が合った。

「ひかるー!好きやでー!」

力一杯手を振りながら恥ずかしいことを叫び出した遠山に顔に熱が集まるのがわかった。何言うてんねんっ!どあほっ!

「…ちゃんと練習しや!」

不機嫌な表情を作り言い返すと遠山は嬉しそうに笑った。
その笑顔に、俺の頬も少し緩んで、それを見た遠山が真っ赤になって固まった。それを見てまた笑ってしまった。
遠山みたいに俺は綺麗に笑えへんけど、少しでもそれに近づいてたらええなって思った。







2010.7.26


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