07



コートに着いた途端に俺はテニス部に来たことを後悔した。な、何やねんアレ…!

「んんーっエクスタシー!」

やたらと基本に忠実でしかも恐ろしいくらいに強いあの人は確か、電車の中で会った白石部長や。汗が妙にキラッキラしとって格好いいどころか逆にキモい思うてもうた。見た目かなり良いのに残念な人やな。

あと部長と試合しとるあの明るい金髪の先輩は多分さっき迷子な俺を助けてくれた忍足先輩?忍足先輩もテニス部やったんやなぁ…ってめっちゃ速っ!!あの人なんで陸上部やないんや。

なんて考え事をしながら新入の奴等と混ざってたらなんや腕組んだ先輩二人が近づいてきた。…え、何。何でそないくっついとんの。

「君ら入部希望者なんやろ?」

坊主の先輩が何やらニコニコして言った。てかなんかくねくねしててオカマっぽい?しかも俺まだ入部希望ちゃうんやけど。周りを見ると周りの奴等は入部希望者らしかった。目がキラキラしとるなぁ、若いわぁ(俺もまだ若いけど)。


「なら毎年恒例“外周五十周マラソン”を始めるわよっ!ねっユウ君☆」
「せやで!小春っ!!」
「ユウ君…!」
「小春!」
「ユ・ウくぅぅん!!」
「こ・は・るぅぅぅぅう!!」

ぎゅうっと抱き締め合う先輩達。もしかしてあれか、ホの付く…。ていうか外周五十周マラソンて何やねん。周りもざわついている。


「外周五十周マラソンちゅうのはな、」


キモい先輩らの後ろからいきなり白石部長が出てくる。試合しとったんちゃうんかい!コートを見ると先輩らは全員試合終わったらしくほぼ全ての先輩らがここに集まっていた。入部希望者が若干引いてる。そら、二年三年の先輩らに囲まれたら怖いわな。まぁ俺は中身三十路のオバハンやから先輩やろうが可愛いもんやけどな。

ボーッと先輩らを見ていたら白石部長が俺に気がついてニコリと笑った。一応先輩やから礼はしておく。

綺麗な顔やなぁ、あの顔でエクスタシー!とか言うんやな。夢でした、とかじゃないんだよなぁ。

「毎年、新入が入ってくる度にやる体力比べみたいなもんや。体力比べ言うくらいや、普通の走り込みとはわけちゃうで」

「去年俺らもやったけど地獄っちゅー話や!」

二年らしき先輩らが力なく苦笑する。え゛!?そんなにキツいん?いややなぁ、俺あんまり体力ないんやで?

「周りは坂道ばっかや。しかも足場悪かったりするしな」うわー…やりたくない。逃げれば良かった。でも白石部長に見つかってもたし。嗚呼、こんな時あのゴンダクレやったら喜んで走りに行きそうやな。ふいに豹柄のシャツを好む少年が思い浮かび苦笑する。あいつの体力は底なしや。野性動物や!化けもんや!!

「ほな、移動すんで。着いて来ぃ」

にやにや笑う白石部長に入部希望者は真っ青だ。嗚呼やりたくないんやけどなぁ、まぁしゃーないか。位置につき軽く屈伸したり腕を伸ばしたりと体を解しながら横目で先輩らを見る。

「マネージャーは?」

「風邪やて〜。しょうがない、俺が記録取ったるわ」

先輩ら、体格ええなぁ。二年なったら俺もあんくらいなるんやろか。…家帰ったら筋トレしよ。あ、でもぜんざい食べたい。
色々考え事をしているうちにスタートの笛が鳴った。周りが張り切って走っていく中俺はゆったり走り出した。一瞬横で忍足先輩が此方を見ているのが見えてため息を吐く。

忍足先輩にも見つかってもたし、もうテニス部に入るしかないなぁ。




2010.3.21

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