06 なん…やて…!?知らへんわ、こんなの知らん。まさか俺が――――… 方向音痴やなんて!財前光、入学早々迷子です。しかもあと十分で式が始まってまうんや。三十分前に着くように来たのに!取りあえず校舎っぽい所へ着くように走ってるんやけど、なんかさっきから同じとこグルグル回ってるような…? 「…痛っ!?」 考え事をしながら走っていた為人にぶつかった。反動で尻餅をつく。あぁ、めっちゃ格好悪い。 「すまんっ!ぶつかってもた!大丈夫か?!」 誰やねん!少し苛つきながら(自業自得やけど)ぶつかった少年を見る。瞬間、派手な金髪が目に入った。端正な顔立ちな上に逆光で金髪がキラキラしとって俺が女やったら「運命や!」思ったかもしれん。 「平気や」 じろりと睨み付けたにも関わらず少年はにこっと愛想のいい笑みを浮かべると俺の腕を掴み立たせてくれた。顔がいい上に性格もいいんかい。なんやムカつく…というか、こういう奴何処かで見たことがあるような? 「ん?お前新入生か?こないなとこで何しとんねん。式始まるで」 「場所わかったら苦労はしてない…」 知っとるわ。迷子やねん、しょうがないやろ!強く睨んでやると少年は一瞬ぽかんとしたが一気に笑いだした。笑うなああああ!!! 「迷子やったんか!まぁこの学校以外と広いからな!しゃあないっちゅー話や」 一頻り笑ったあと少年はくしゃりと俺の頭を撫でた。 「会場まで送ったる。あ!せや俺は忍足謙也、二年やで。よろしゅうな」 「財前光っすわ、こちらこそ」 なんかめっちゃいい先輩やなぁ。いい先輩やけどなんか…兄貴思い出すんは何でやろ。 無事に式やHRが終わって固まった体を解すように背伸びをする。ていうか一番疲れたのが校長の挨拶や。校長がボケる度に転けなあかんとか…なんやそれ。何時か怪我人出るで。椅子に座ってのんびりしていると生徒が慌ただしく出ていくのが見えた。 「(あー…、今から部活見に行けるんやっけ)」 テニス部、やっぱ入らなあかんよなぁ。一応原作は変えたらあかんらしいし。俺は別にストテニでええんやけど。しゃーないすわ。それにやっぱ力制御せないかんよな、うん。原作の財前光、原作の…て俺あんまり原作の財前光知らんのやけど。 ――――まぁええか! 机の上に散らばっていたプリントをかき集めると乱暴に鞄に突っ込んだ。 「しゃあない。テニス部行ってみるか」 2010.3.19 |