俺の未来への一歩のはずだった



怖くて、恐くて。
堪らなくなって逃げ出した。



『ひかる、みんなで逃げるんじゃ、諏訪口がおらん間に』

『無理や。俺ら子供がどう頑張ったってどうにもならへんわ』

『無理じゃなか!協力してくれる人もいるけん…お願い、一緒に逃げよう』

一筋の光が見えた気がして、俺は友人、仁王さんの手を取って走り出した。仁王さんの手は少しだけ汗ばんでいて俺の手も冷たくてお互いの間に緊張感が生まれる。走って走って、仁王さんが言っていた協力してくれるという青髪の人やその他数人の研究者に誘導されて外に出た。

『外、や…!』

風が俺達の間を通り過ぎていった。それには研究室の薬品の匂いも機械の錆びた匂いもなくてただ優しかった。

これで実験のせいで痛い思いも辛い思いもせんでええんやって思ったら涙が止まらなくなった。仁王さんを見たら仁王さんも涙と鼻水でぐしゃぐしゃでせっかくのイケメンが台無しになってて少し笑った。

『光、どんなことがあっても生き延びよう。生きて、また俺と会ってくんしゃい。またいつか何処かで』

『……おん、また、いつか』

その時、俺はこれから先ただ一人の人間として生きていけるのだと信じて疑わなかった。
ただ手を引かれながらこれからの未来に胸を弾ませていた。











2010.8.4

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