04



来週から俺も中学生や。あ、楽しみにしとるんちゃうで?なんつーか小学生ってガキやろ。中学生になったらマシになるんちゃうかなーって思って。
小学校はガキくさくて敵わん。まぁ低学年の子ぉは可愛いけどな。

可愛いと言えば、今日やって来た甥っ子!めっちゃ可愛ええんや!姉さんに似て良かったなぁ。美人になるで!男やけど。

ホンマ兄貴に似たら大変や。
今もタオルケットが無いゆーて俺に買いに行かせよった。自分で行けっちゅーに。

ため息を吐きつつちらりと電車の中から外を見るとちょうど来週から通う四天宝寺中学校が見えた。

中学受験したんや。私立受けとったら高校上がる時に受験戦争体験せんでええからな。
勉強ばっかするのはあんま好きやないからなぁ。でも俺一応大学まで行ってたし頭には自信がある。アレや。単に面倒くさいだけ。

ガタン、と電車が揺れる。足元が急に不安定になり思わず目の前の人にぶつかってしまった。

「あっ、すいません」

謝罪を述べ目の前の人を見上げるとやたらと顔の整った少年がいた。

「いや、気にせんでええよ」

少年はにこりと笑う。
うわー…、男なんにめっちゃ美人や。それにしても、この人何処かで見た覚えが…?思わずじっと観察してしまった。

「何や、俺の顔に何かついとるんか?」

少年は苦笑し前髪を左手で撫で付ける。その左手には真っ白な包帯が巻かれていた。

あ!この人!!!

「…白石、蔵ノ介…?」

思わず口に出してしまった。言ったあとにはっとする。相手も驚いたように目を丸くしていた。

ちょっ!? ぎゃああああああ!!
アカンやろおおおおお!!!!?
何言いよるん自分?!初対面の相手が自分の名前を知ってるとか、キモいわ!!
かっ考えろ、言い訳を!!

「何で俺の名前…」

「確か、四天宝寺中のテニス部やったっすよね」

超ビビってても表情に出さない俺って結構凄い思うんやけど。

「あぁ!お前四天宝寺に入学するんか」

不審そうな表情から一変して笑顔になる白石さん。良かった、騙せたみたいや。漫画で知っとるからなぁ、注意しなあかん。

「お前テニス部入るん?」

「えぇ、まぁ」

あ、俺一応小学生からテニスやっとるで。原作を崩さんちゅうのがあの男とな約束やったしな。でもやっとる内に楽しなってもーて今や特技や。

「そうやったんか。俺は白石蔵ノ介や…って知っとるよな。一応今年から部長になってん!よろしゅうな」

「財前光っすわ。宜しゅう、白石部長」

それから、俺と白石部長と何か色んな話で盛り上った。盛り上ったってか俺は相槌打ってただけやけどな。白石部長は結構博識で話しやすかった。…って中身は三十路の俺と話が合うってどういうことやねん。
中でも興味深かったのが毒草の話。超マニアックや。めっちゃ力説されたけどコレ何回もされると正直ウザイわ。

「じゃあ俺は此処で降りるから来週な」

「はい」

白石部長はニコニコしながら帰って行った。あー、何か妙に疲れた気ぃする。はよタオルケット買って帰ろ。
俺は電車の端に寄りかかると目を閉じた。目的の駅まであとニ駅、乗り過ごさんよぅにせな。


2010.3.9


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