03 生まれ変わり、現在、財前光。十ニ歳。前の年齢入れたら三十ニ歳や。精神年齢三十路以上になったんやで?ありえん。マジあり得んわ。まさか自分が財前光に生まれ変わるなんて思わんかった。あの男、確かに妹にわからんよーに言うたけど、これは…ないやろ。まぁ今更言っても意味ないけど。でもあの男のおかげで俺は生きられとるんから感謝せなあかんなぁ。 パソコンの画面を見すぎて乾燥した目に目薬を指す。じわりと水分が目に染み込んでいく気がした。ニ、三度瞬きすると目の端から目薬が溢れたが拭うのが面倒くさかったので放置したまま椅子に深く座った。 あー、しぱしぱする。やっぱ株は目が死ぬ。ん?何や。小学生が株やるんが変やて?しゃーないやろ、中身は三十路のオバハンやで。…あかん自分で言って悲しなったわ。まぁアレや、今年から中学生やもん!銭がいるんや!欲しいもんもあるし。 因みに親は株やっとること知らん。通帳作って欲しい言うたときに不審な顔したが何とか乗りきった。 再び画面に視線を戻す。嗚呼うん、今日はまぁまぁやったな。これやから株は止められん。 元々勝負事は好きやし、でもギャンブルとかだとカモられるだけカモられて終わるし(パチンコとか代表例や)。やけど株は脳の回転と知識が試される場合が多いし中々オモロイ。 ふぅ、と大きく息を吐くと同時にいきなり凄い音をたてて部屋の扉が開いた。いきなりのことにびくりとする。 「光ぅぅぅう!自分の部屋の掃除終わったんやったらこっち手伝ってや!!」 「ちょ、アホっ!急に開けんな馬鹿兄貴!!」 入ってきたのは兄貴の明(メイ)だった。兄貴は大学生の癖になんかアホや。なんつーかアホの空気を出しとる。アホやから出来ちゃった婚とかするんや。 しかもなんか今頭に埃が乗っててアホっぽさが更に際立っとる。 「誰がアホや!!…て何暢気にパソコンいじってんねん!そんな暇あったら手伝え!!!」 「面倒い。俺の部屋は片付いたわ、俺は満足や」 「頭カチ割ったろか!!?」 俺はため息を吐いてパソコンの電源を落とす。このままやったら無理矢理不当な方法で兄貴に電源落とされそうやし。 今日は兄貴の嫁さんが家に来る日。ていうか、家族になる。兄貴と兄貴の嫁さんが結婚して、その後兄貴の嫁さんが子供産むために入院したんやけどこのあいだ産まれた。男の子やった。兄貴に似らんで良かったなぁ。 そんでその兄貴の嫁さんと甥っ子がうちに一緒に住むことになったから準備しとったんやけど…何か大掃除みたいになってん。 しまいにはリビングや自分の部屋まで掃除しなあかんくなった。 「ほな、行くで光!!」 兄貴は嫁さんと甥っ子が来るのが楽しみで堪らんのか始終ウキウキしとる。目なんかめっちゃキラキラしててキモいくらいや。 明は光の手を取ると駆けるように歩き出した。 「めっちゃウザいで兄貴」 何ぃぃぃ!!と言いながら突っかかってくる兄貴を軽く交わしながら口元に笑みを浮かべる。 自分も少しだけ楽しみだなぁ、と思った。 2010.3.8 |