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この間、部長に告白されてキスされてもた。部長曰く「財前、お前をメロメロにしたる」らしい。メロメロて何やねん!ため息しか出ぇへんのやけど。あー…ほんまもう学校行きたくない。寧ろ千里さんと部長に会いたくない。あ、いや千里さんはええかな…って何言わせるん!取りあえず誰か助けてや。しゃーないすわじゃもう片付けられへんねん。時計を見るともういい加減準備せなあかん時間になってて再びため息を吐きながらベッドから起き上がる。

「光君、もう起きとる?」

部屋の扉を軽くノックする音と共に義姉さんの声が聞こえてそちらを向く。ノックだけてのは、義姉さん部長が俺のベッドに無断侵入したあの日からめっちゃ俺に気を使ってるんや。そんなんええのに。ていうかそれ部長のせいやん!部長のアホ!
鈍い動きでベッドから這い出ると部屋の扉を開ける。いきなり出てきた俺に驚いたのか義姉さんは目を丸くした。

「起きとんで。あと、別にドア開けてもええのに」

「いや、その…ね?光君もお年頃やし」

ね?て何やねん。やっぱりあの事件のせいやな、せやろ!?

「別にええから。てかどないしたん?義姉さんが起こしにくるなんて珍しいわぁ」

義姉さんが起こしにくるのなんて俺が寝坊した時くらいや。俺は朝低血圧やけど一人で起きられるし、滅多にない。

「外に金髪の男の子がおるんやけど、光君の知り合いかなぁて思って」

…金髪の?ってまさか謙也さん?
窓に駆け寄り(俺の部屋の窓から玄関辺りが見えるんやで)下を見ると派手な金色。あの天然色は謙也さん以外ありえへん。でも何で俺の家に?あ、藍華待ってるとか。
…いやそれは無いか、藍華は朝練参加せんからこの時間に起きる必要ないしなぁ。
やったらやっぱり俺待っとるん?

「謙也さん!!!」

窓を開けて近所迷惑にならない程度に大きな声で謙也さんを呼ぶ。謙也さんは声に反応して周りを見渡したあと、上を向いた。ぱちりと目が合ったあと謙也さんはニッと明るく笑った。

「光っ!一緒に行かへん?」

「一緒に行かへん?てもう来とるやん謙也さん」

「メールしようかと思ったんやけど、よう考えたら光のメアド知らんちゅー話や」

そう言えば教えてへんかったわぁ。ってそれより何で謙也さん俺の家知っとるんやろ。一緒に帰ったのなんて一回やし、途中で別れたやん…あ、部長か。多分てか絶対そうや。あの人以外思い付かん。

「…しゃーないから一緒に行ったりますわ。ちょっと待ってて下さい!」

謙也さんの返答は聞かず勢いよく窓を閉めると義姉さんに朝食頼んで急いで準備した。髪の毛整えとる時間はないか、しゃーない。髪は整えないけど朝食はちゃんと食べるで。朝食は大事やねんで!
リビングに降りて立ったまま食パンだけ食べて(オカンが顔しかめとったけど無視や!)歯を磨いて外に出る。歯を磨いてる時点で急いでへんって?…謙也さんは待ってくれる、はずや。

「謙也さん、待った?」

「いや待ってへんで。てか意外と早かったやん。ほな行くでー!」

謙也さんはにこりと笑って停めてあった自転車に跨がる。あ、謙也さん自転車なん?俺自転車持ってへんで。…いや乗れないとかやなくて歩いたり走ったりする方が好きなだけや。暫く謙也さんと自転車を見比べてたら謙也さんが振り返って突っ立ったままの俺の腕を掴んだ。

「何しとるん。はよ後ろに乗りや」

「…乗ってええの?」

「何言っとるん!光一人走らせる訳あらへんやろ!はよせな朝練遅れるでー」

普通彼女とか乗せるやろ、後輩乗っけるなんて変な人やなぁ。

「なら遠慮なく」

自転車の後ろに跨がって落ちないように謙也さんの腰に腕を回すと謙也さんの体が一瞬びくっとして硬直した。え、何なん?何で固まっとんの。

「謙也さん?どないしたん」

「え゙っ!?あ、何でもないちゅー話やっ!」

「…ならええけど」

「お、おんっ!」

ようやく自転車を漕ぎ出した謙也さんはなんや何時もより口数少なくて変やった。
でもまぁ楽出来たしええか。




2010.4.30

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